セイコーエプソンは6月19日、ウェアラブル事業戦略説明会を開催し、同分野を事業の1つとして成長させ、「エプソン=プリンタ」という従来のブランドイメージを刷新したいと発表した。説明会ではセイコーエプソン代表取締役社長の碓井稔氏が登壇し、これまでの取り組みや今後の展望を語った。
エプソン独自の技術やノウハウで他社と差別化
碓井氏は「『健康・医療』『スポーツ』『ビジュアルコミュニケーション』の3分野を軸に、デバイスとプラットフォームを通じて『価値ある情報』を提供し、ユーザーにとっての『Better Lifestyles』を実現する」と提案した。
健康・医療の分野では、生活習慣病の改善や運動療法の支援などを目指す。「エプソンが得意とする高精度なセンシング技術で正確かつ多様なデータを収集し、専門的なアドバイスを提供する」(碓井氏)としている。スポーツ分野ではスマートフォンと連携することでデータを蓄積・分析し、スポーツの記録を向上させることを目指す。スマートグラスを中心とするビジュアルコミュニケーションの分野では、自由なスタイルで映像を楽しんだり、仕事のやり方を革新したりといった変化を提案した。
碓井氏は、ウェアラブル事業を長期ビジョン「SE15」における成長領域として注力すると明言。「エプソンが培ってきた独自の技術やノウハウは他社に負けない差別化ポイントだ」(碓井氏)と胸を張る。
1969年の「クオーツウォッチ」に始まり、「テレビウォッチ」や「リストコンピューター」など、同社はウェアラブル機器で“省・小・精”(省エネルギー・小型化・高精度)の技術を蓄積してきた。特に「モーションセンシング」「バイタルセンシング」「ポジションセンシング」「マイクロディスプレイ」の4つに強みを持つほか、「装着したときの着け心地や快適性、デザインなども重視している」(碓井氏)という。高精度センサーについては「産業分野でも利用できるレベル」とし、他社に対する優位性を繰り返し強調した。
ウェアラブル分野ではAppleやGoogleなど強力なライバル企業がいるが、碓井氏は「我々が作るのは一般受けするものではなく、際立った性能をもつ商品。プラットフォームだけでは勝負にならないのは理解しており、エプソン独自の技術を採用した高性能なハードウェアとの組み合わせが重要だと思っている」と説明した。
高精度なGPSやメガネ型ヘッドマウントディスプレイに強み
ハードウェアは、健康・医療分野向けに「PULSENSE」という脈拍計測機器を2014年度内に商品化する予定で、スポーツ分野ではランナー向けの「GPS Sports Monitor」やプロゴルファーのスイングも測定可能だという「M-Tracer MT500G」などをすでに発売している。ビジュアルコミュニケーションの分野では、発売が延期されていたヘッドマウントディスプレイ「MOVERIO」シリーズの新モデル「BT-200」がコンシューマー向けに提供される。
PULSENSEはスマートフォン用アプリと連携し、脂肪の効率的な燃焼や消費カロリー、睡眠の質などを把握できるようにする。GPS Sports Monitorもクラウドサービス「NeoRun」と連携して各種ランニングデータを管理・分析することが可能だ。本製品はフルマラソンなど本格的にランニングをする人向けの腕時計型端末で、エプソンダイレクトショップでの価格は1万8858円〜3万3143円(税別、以下同)となっている。
M-Tracer MT500GはスマートフォンとBluetooth連携して、スイング解析の結果を蓄積・分析できる。iOS 7以上向けの専用アプリを提供しており、Android OSには7月上旬に対応する予定。エプソンダイレクトショップでの価格は2万7593円。
MOVERIOは従来機の約240グラムから約88グラムに軽量化し、長時間の装着に耐えうるようになった。ディスプレイがシースルー構造になっているのが特徴だ。
担当者によると、「6月30日に発売する予定」ということだ。碓井氏は「将来的にはメガネを掛けているのと変わらないレベルのものを作る。10年くらいで実現したい」と展望を語った。これらのデバイスを提供することで、「人の生活を豊かにする、未来を切り開くブランドというイメージを目指す」(碓井氏)という。価格は6万4797円で、HDMI接続用アダプタ同梱モデルは8万3315円になる。
また、会場には「smart canvas(スマートキャンバス)」の展示もあった。本製品はエプソン独自のEPD(電気泳動ディスプレイ)技術を利用した腕時計。担当者によると、「時間帯や日付によって画面の中でキャラクターが動く仕掛けが施されている」という。バンド部分はスライドさせるだけで簡単に付け替えができる。価格はデザインによって異なり、1万8000円〜2万3000円となっている。
碓井氏は今後の展望について、「協業の必要が出てくることもあるが、基本的に自社ブランドとして開発から販売までを行う。アプリ開発者にも、エプソンと組まないとこの領域は開拓できないと思ってもらえるハードウェアを開発していきたい」と意気込みを語った。
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