米Alcoa(アルコア)*1)とイスラエルPhinergyは、2014年6月、アルミニウム空気電池を備えた走行可能な電気自動車をカナダのモントリオールにあるサーキットで初公開した(図1)。ケベック政府は両社と共同でアルミニウム空気電池の採用に向けて働きかけるという。
両社が共同開発したアルミニウム空気電池は走行可能距離が長いことに特徴がある。約1600kmだ。通勤などで1日25km乗車するユーザーなら、2カ月以上、そのまま使い続けることが可能だ。両社は、アルミニウム空気電池を採用することで、電気自動車の航続距離や価格、ライフサイクルコストがガソリン車と同等以上になりうると主張する。
*1) 米Alcoaはアルミニウム製造業として120年以上の歴史があり、世界第3位の規模の企業。アルミニウム精錬法を開発したCharles Martin Hallが設立した。自動車産業とのかかわりも大きい。同社が開発したアルミニウム溶接技術(Alcoa 951)は自動車会社がアルミニウム材料の大量採用に向かった1つの要因だと主張する。
金属アルミニウムが水と反応して水酸化アルミニウムに変化する際に、電流を取り出すことで動作する電池。アルミニウム1kg当たり最大8kWhの電力量が得られるという。リチウムイオン蓄電池との最大の相違点は、充電可能かどうかという点だ。両社のアルミニウム空気電池には充電という概念がなく、使い終わったらカートリッジを交換する。
Alcoaによれば、水力発電などの安価な電力を使ってアルミニウムを製造し、電池パネルに加工する。利用後に水酸化アルミニウムを回収し、そのままアルミニウムの原料として再利用するという。
同電池は電気自動車以外にも用途がある。定置型だ。病院やデータセンターなどさまざまな非常用電池として利用でき、防衛用途にも適するという。使用を開始するまで無制限に貯蔵しておくことができ、水を追加するだけで電力を取り出すことができるためだ。さらにエネルギー密度が高いため、非常時など、初期に対応するための電池としても優れるという。
どのような電池なのか
今回電気自動車に搭載した電池モジュールの寸法や重量は公開されていない(図2)。モジュールの推定重量は約50kg。約20cm角のアルミニウムを主成分としたパネル(電池セル)を50枚搭載しており、モジュール全体の長さは100cm近くあるようだ(図3)。Alcoaの説明によれば、パネル1枚当たりの走行可能距離は約32km。パネルごとに「ガソリンスタンド」で交換する形を採る可能性もあるとした。
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