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ソフトバンクのロボット事業、本命は「Pepper」ではなく「V-Sido OS」か!?

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アスラテック

 パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」を引っ提げてロボット事業への本格参入を発表したばかりのソフトバンクが、早くも次の一手を打ってきた(関連記事:ソフトバンク、世界初となる“愛”を持ったパーソナルロボット「Pepper」発売へ)。

 2014年6月11日、ソフトバンクの100%子会社であるアスラテックは、「新規ロボット事業」に関する記者説明会を開催(関連記事:ソフトバンクがロボット事業で二の矢を放つ、人とロボの橋渡しをする「V-Sido OS」)。ロボット制御ソフトウェア「V-Sido OS」およびV-Sido OSの一部機能を1枚の基板に実装したマイコンボード「V-Sido CONNECT」を主軸とした事業戦略について発表した。アスラテックがソフトバンクグループとして大々的にロボット事業に関する発表を行ったのはこれが初めてとなる。

吉崎航氏アスラテック チーフロボットクリエーター 吉崎航氏

 既にご存じの方もいるかと思うが、 「V-Sido(ブシドー)」とは、当時、奈良先端科学技術大学院大学の学生だった吉崎航氏が1人で開発したロボット制御ソフトウェアである。鉄鋼アーティストの倉田光吾郎氏と共同開発した搭乗型ロボット「KURATAS(クラタス)」に採用されたことでも有名だ。現在、吉崎氏は、2013年7月に設立されたアスラテックにおいて、チーフロボットクリエーターとしてその手腕を発揮している(関連記事:搭乗型巨大ロボット「KURATAS」を安全に動かすソフトウェアのヒミツ)。

 本稿では、発表会当日の模様と、別途、吉崎氏に取材した内容とを織り交ぜながら、アスラテックの事業戦略について詳しく紹介していく。

人間とロボットの橋渡しをする「V-Sido OS」

 先日のPepperの登場に象徴されるように、ロボット業界が今盛り上がりをみせている。さまざまな企業や研究機関などが災害用や介護用といったロボットを世に送り出している中、吉崎氏は「『AI』『制御』『モータ』『センサー』『機構』など、ロボット開発に関わる各分野が今まさに活性化し始めている」と語る。その中で、アスラテックはロボット制御の中核となる「OS」部分にフォーカスし、V-Sido OSの普及・展開を狙おうとしている。

アスラテックの事業領域アスラテックの事業領域

 V-Sido OSは、従来のロボットのようにあらかじめ決められた(作り込まれた)モーションで動作するのではなく、リアルタイムで関節の動きやバランスなどを計算しながらロボットの動きを自動制御できる(関連記事:ホビーロボから巨大ロボまで——ロボットの簡単制御を実現する「V-Sido CONNECT」)。吉崎氏は「V-Sido OSには、“人とロボットをつなぐOS”に必要な要素である『リアルタイム』『安定化』『効率化』の3つが備わっている」と説明。これら要素により、人の意図が伝えやすく、安全で、使いやすいロボットの開発が可能になるという。


 記者説明会で披露されたムービー(動画1)では、「ロボットのOSとは、人間とロボットとの間を取り持つ役割を担うもの。難しいプログラムを必要とせずに、命令1つでOSがロボットに指示を出してくれる」と紹介。V-Sido OSは、PCやスマートフォンにおけるOSと同様に、システムの中枢を担うわけだが、単に「右腕を上げる」という命令を指示するのではなく、転倒しないよう全体のバランスをリアルタイムで計算した上で、ロボットの右腕を上げさせる。何も考慮せずに「右腕を上げる」という命令だけを実行してしまうと、腕を振り上げた途端にロボットがバランスを崩し、転倒する可能性がある。

 例えば、Pepperのように家庭内や店舗などで動作する等身大パーソナルロボットを考えた場合、“転倒”はロボット自身が壊れるだけではなく、家族(人間)がケガをする危険性もある。そういう意味で、リアルタイムに倒れないよう制御をしてくれるV-Sido OSの役割は大きいといえるだろう。

V-Sidoの3つの特徴V-Sidoの3つの特徴

 「V-Sido OSは、一般的なロボットのように動きをあらかじめ作っているのではなく、人間の意図に合わせて問題のない動き、矛盾のない動きをリアルタイムに生成する。用意されたモーションで動くのではなく、人間が大まかに指示した意図を瞬時に理解して、思い通りに動かすことができる」(吉崎氏)。例えば、「歩く」という指示を出した場合、安定して歩行するのはもちろんだが、その際の上半身の動作は特に指示することなく、V-Sido OS側で勝手に効率化して動かしてくれる。


クラウドがロボットを動かす時代に

 続いて、吉崎氏は「ロボットの操縦は、人間だけが行うものではない」と述べる。今後は、人間の操縦だけでなく、AI(人工知能)、クラウドAIといったものが“知能”として、ロボットに指示を出すことが考えられるという。

 また、一方で実際の動作を生み出す“機械”についても、サーボモータ、油圧、空圧などさまざまなバリエーションがあるとし、「これからのロボット開発は、多種多様な知能と機械に対応していく必要がある。V-Sido OSであれば、従来のようにサーボ用、油圧用などのソフトウェアを個別に用意することなく、V-Sido OSを仲介させるだけで、全ての知能と機械をつなぎ込むことができる」と吉崎氏は説明する。

知能と機械をつなぐOSさまざまなロボットに対応可能(左)知能と機械をつなぐOS/(右)さまざまなロボットに対応可能 ※画像クリックで拡大表示

 まさに、こうした“違い”を吸収してくれる点がV-Sido OSの強みであり、大きさや構造が異なるさまざまなタイプのロボットへの展開を可能とする。

ホビーロボットGR-001(HPI製)
RIC30(アールティ製)
その他オリジナルロボット
等身大ロボットネコ店長(アールティ製)
NEXTAGE(川田工業製)
アクトロイド(ココロ製)
I-FAIRY(ココロ製)
大型ロボットクラタス(水道橋重工製)
パワーショベル(人型ロボット HRM2で遠隔操作)
表 これまでのV-Sido OSの主な適用実績

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