Appleの「iPhone」は、発売当初から“肉付け”の必要がない目玉製品として突如、現れた。iPhoneは「間もなく市場に投入される」と、発売前から大々的にうわさされるようなことはなかった。しかし、Googleの「Google Glass(Project Glass)」は違う。時間をかけて新しい製品カテゴリを生み出そうとしているようだ。
GoogleはGoogle Glassの開発にあたり、携帯端末業界において、組み込みマイコン開発システム「Arduino」やDIY(Do It Yourself)型の手法を活用することを目指している。今のところ同社は、ハードウェアよりも必要性が高いとされる、強い熱意を獲得することに成功している。
現在のところGoogle Glassが優れている点は、2つあるようだ。まずはスマートフォンと同等レベルの画質(決して高画質とは言えないのかもしれないが)を確保したこと。そして、“顕示的消費”の象徴としての役割を担っていることだ。つまり、Google Glassを買うことで、消費者は「自分は、はやりの最先端機器を持っている」という満足感が得られるというのである。
米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催された、Googleの開発者向けイベント「Google I/O」(2013年5月15〜17日)では、Google Glassの開発担当者4人が講演を行った(関連記事:Google Glassは注目の的、Chromebookやグランドキャニオン帰りのStreet View用カメラもお披露目)。その中の1人であるCharles Mendis氏は、ソフトウェア開発を担当している。
Google Glassのプロトタイプモデルを発売し、使い方のアイデアを募るプログラム「Explorer Program」には、多数の希望者が1500米ドルの費用を払って参加している。彼らは、Google Glassを装着してGoogle I/Oに集まった。
Googleが描いている計画は、壮大だ。同社が目指す次世代のモバイル端末では、これまで主に焦点を当ててきた“ユーザーの生活の中心になるサービス”から、“ユーザーの生活を裏方で支える技術”へと移行する考えだという。
Googleがコミュニティとして進めているこうした取り組みは、称賛に値する。もし失敗すれば、“失敗した”という事実が派手に(そして必要以上に過度に)報道される可能性もあるためだ。Googleは、Appleの動向を、後ろに控えてじっと観察し、当たりが出たらそれをオープンソースで模倣する、というスタイルをやめたようだ。とはいえ、Androidはこれまでにかなりの成功を収めている。
ただ、Google Glassのハードウェア面での仕様や情報がはっきりしていない点には不満が残る。分解記事もないし、主要な機能や一般公開予定なども公表されていない。Google Glassの開発は、多くの開発者を巻き込む、開かれたプロジェクトでありながら、情報は閉ざされている。「Googleの指示に従って、自分で設計してほしい」というわけだ。
Googleは近いうちに、同社のコンテスト「If I Had Glass(もしGoogle Glassを手に入れたら)」に応募した10万人の中から、8000人以上を選び、Google Glassを実際に使用してもらう予定だという。Google開発者の1人は、「選ばれたユーザーたちが、Google Glassをどう使うのかをぜひとも知りたい」と述べている。
ウェアラブルなコンピュータ自体は、そこまで目新しいものではない。だが、市場を席巻するほど勢いのある製品は、まだ出ていない。ただ、もしGoogle Glassが失敗したとしても、Googleは何かしらの経験が得られるし、プロジェクトやコンテストの参加者は少なからず楽しい思いはできるだろう。
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