HPがクラウドサービスの強化策を発表
気になるクラウドサービスの最新動向ということで、最近発表されたものの中から次の4つに注目してみた。
まず1つ目は、IDC Japanが5月7日に発表したデータセンター(DC)サービス利用に関する企業ユーザー調査結果である。
それによると、企業がコロケーションやホスティングなどのDCサービスを新規に契約する場合に、対象となるシステムをそれ以前にどのように運用していたかを聞いたところ、企業の自社DC(サーバルームを含む)での運用が最も多いことが分かった。
企業にとって事業者が運営するDCの利用は、運用の外部委託によるTCOの削減や災害対策といったさまざまなメリットがあることから、企業のITが“所有から利用へ”と確実に移行していることが裏付けられた格好だ。
一方、事業者によるDCサービスでは概ね、企業にとってシステム構築や運用の柔軟性が高いサービスから、より標準化された安価なサービスへの流れが見られた。また、パブリッククラウドのIaaS型サービスの新規契約では、全くの新規システムは約2割にとどまり、既存システムの移行が約8割と大半を占めた。
移行以前に利用していたDCサービスは特定のサービスに偏ることなく分散しており、パブリッククラウドのIaaS型サービスはオンプレミスからコロケーション、共有ホスティングまでの多様な利用形態からの受け皿になっていると、IDCでは見ている。こうした調査結果から、クラウドサービスのメリットが広く認知され、クラウドへの移行が本格的に始まったことがうかがえる。
2つ目は、米HPが5月7日(米国時間)に発表したクラウドサービスの強化策である。内容は、オープンソースのクラウド基盤構築ソフトウェアであるOpenStackをベースとしたクラウド製品やサービスで構成する新ポートフォリオ「HP Helion」をグローバルで展開するというものだ。この事業に今後2年間で10億ドル以上を投資するとしている。
同社はかねてOpenStackベースのクラウドサービスやDC向けのサーバなど各種製品を展開しているが、今後はこれらもHP Helionの製品サービス群として位置付けられる予定だ。この発表は、これまでクラウドサービスにおいて競合他社と比べていまひとつ迫力に欠けていたHPが、いよいよ本格的に動き出したことを印象づけるものだ。近いうちに日本HPが全容を説明すると思われるので、それを待ちたい。
NTT Comがサービス価格競争に本格参戦
3つ目は、日立製作所が5月8日に発表したAmazon Web Services(AWS)対応のミドルウェア従量課金サービスである。「オンデマンド・ミドルウェアサービス for Amazon Web Services」と呼ぶ新サービスは、「JP1/Automatic Job Management System 3」「uCosminexus Application Server」「HiRDB Server」といった日立のミドルウェア製品をAWS上でオンデマンド利用できるようにしたものだ。
新サービスのミソとなるのは、ミドルウェアのライセンス料を従量課金で利用できるようにしたことだ。日立のミドルウェア製品は既にAWSで使用できるものの、これまではライセンスを事前に購入しなければならなかった。
クラウド利用に伴って既存のミドルウェアやアプリケーションのライセンス形態を従量課金に移行する動きは他でも進みつつあるが、まだまだ模索中のベンダーも少なくない。ユーザーとしても支払いに関わる重要な部分だけに、サポートなども含めてしっかりとチェックする必要がありそうだ。
4つ目は、NTTコミュニケーションズ(NTT Com)が4月28日に発表した企業向けクラウドサービスの大幅な値下げである。内容は、「Bizホスティング Enterprise Cloud」と呼ぶサービスにおいて、安価なリソース確保型プラン「Guaranteed」を新たに提供開始。Guaranteedはリソース確保型のCPUおよびメモリを提供するプランで、現行のリソース保証型「Premium」と同等品質のSLA対応プランを従来価格の60%の料金で利用できる。加えて、既存のコンピュートクラス「Standard」プランおよびストレージクラス「Standard」プランの料金を最大25%値下げした。
NTT Comはさらに4月15日、パブリッククラウドのIaaS型サービス「Bizホスティング Cloudn」についても最大31%値下げすると発表した。クラウドサービスの料金をめぐっては、先行するAWS、Google、Microsoftが今年3月下旬から激しい値下げ合戦を繰り広げているが、NTT Comもこれに本格参戦した格好だ。同社はグローバルなDC展開も積極的に行っており、通信事業者としてのアドバンテージもある。
クラウドサービスのIaaS/PaaS型サービスをめぐっては、先の3社が話題に上ることが多いが、実はNTT Comも虎視眈々と追い落としを狙っている。同社が今後、ビジネスパートナーとのエコシステムづくりなどでどのように勢力を拡大していくか、注目しておきたい。
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