「050plus」「楽天でんわ」「LINE電話」など、格安の通話サービスが人気を集めている。050plusとLINE電話はパケット通信を利用したIP電話だが、LINE電話は発信者の番号に自分の携帯番号(090や080)を設定できるのが大きな特徴だ。楽天でんわは通信キャリアの音声回線を経由するのが特徴で、IP電話よりも高い品質で通話ができることをウリにする。
これらの通話サービスは、基本的に通信キャリアのSIMカードを装着した状態で利用するものだが(LINE電話はSIMなしでも発信はできるが)、MVNO各社が提供しているSIMを装着した場合はどうなるのか。インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)が4月19日に開催した「IIJ mio meeting #3」にて、ネットワーク本部 ネットワークサービス部 ネットワークサービス課の宮本外英氏が説明した。
「IIJmio高速モバイル/D」では、データ通信SIM、SMS対応SIM、音声通話対応SIM(「みおふぉん」)を提供している。050 plusは3種類のSIMいずれも利用できるが、キャリアの音声回線を利用する楽天でんわはデータ通信SIMとSMS対応SIMでは利用できず、みおふぉんでしか利用できない。
少しややこしいのがLINE電話だ。LINE電話は090や080の電話番号を用いるIP電話だが、電話番号を使うのは発信時だけなので、例えば最初にSMS認証をしたSIMを抜き取って、データ通信SIMを入れ替えても、発信だけはできる。ただし着信相手がかけ直す際は音声回線を経由するので、データ通信SIMやSMS対応SIMでは着信はできない。みおふぉんは音声通話対応なので、発信も着信も可能だ。
こうした仕様について宮本氏は「ちょっと普通じゃないところがあるかなと思う」と話す。例えば、データ通信SIMとSMS対応SIMを装着したスマートフォンからLINE電話で発信し、着信側がかけ直しても、(認証に使ったSIMを装着した)別の電話に着信をするか、着信しなくなる。
総務省の「事業用電気通信設備規制」では、発信者が本来のものとは異なる電話番号(いわゆる“番号なりすまし”)で発信した場合、「必要な措置を講じなければならない」旨が定められている。ただし「他の利用者に対し、発信元を誤認させるおそれがない場合は、この限りでない」ともある。
発信元の誤認とは何を指すのだろうか。総務省が2008年4月21日に公表した「異なる電気通信番号の送信の防止に係る省令の取り扱い方針」では、電気通信番号の役割の観点(地理的識別、品質識別、サービス形態の識別、社会的信頼性の識別)から、「発信元を着信者に誤認させないよう必要な措置を講じていること」「発信番号通知を受けた人が当該番号に発信した場合に、発信元への着信が確保されていること」を満たしていれば、問題ない旨が記載されている。LINE電話がこれら2つを満たしているかといえば、微妙なところだ。
LINE電話を使う際にSMS認証ではなく電話番号認証を行えば、IP電話や固定電話に着信させることもできてしまう。つまり03から始まる電話番号が、大阪にいる人が発着信に利用できたり、IP電話用の番号になったりもする。こうした状況について宮本氏は「電話番号の役割が変わってきている」とみる。また、LINE電話からドコモ端末に着信した場合は一律で非通知となるが、他キャリアの端末へ着信した場合は番号が通知される。宮本氏は、「データ通信SIMを提供している立場としては、一律で番号が通知されるのではなく、コールバックできない状態の非通知を選べるようにしてほしい」と訴える。
「LINE電話のような使い方を、新しい価値と考えるのか、ダメだと考えるのかは、議論の余地があると思う。FMC(Fixed Mobile Convergence:固定通信と携帯電話の融合)についての議論もあらためて出るのでは」(宮本氏)
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