スマホや小型タブレット向けのWindowsを無料化へ
Microsoftは米サンフランシスコで、開発者5000人を集めた「Build 2014」を開催しているが、その基調講演において、Windowsの新たな戦略が見えてきた。
基調講演では、時間の大半が「Windows Phone 8.1」に割り当てられた。ご存じのようにWindows Phoneは日本で販売されておらず、近日に発売される予定もないため、日本の読者には「現時点では無関係」な内容である。
しかし、PC用のWindows 8.1向けアップデート「Windows 8.1 Update」に加え、Windows Phoneも含めたMicrosoftのWindows戦略は、視点を変えると従来からのWindowsユーザーにとっての朗報も含んでいる。それはMicrosoftが再び、「Windowsデスクトップ」の改良に力を入れ始めたことを示しているからだ。
BuildにおけるMicrosoftの最も大きなテーマは、スマートフォン、タブレット、PC、そしてゲーム機のアプリケーション動作環境を統一することだ。開発者はWinRTのフレームワークで開発することで、各プラットフォームで動かすことが可能な「Universal Windows Apps」を作成できるようになる。
Universal Windows Appsは、多様なデバイスで共通のアプリとして動かすことが可能で、一度、アプリケーションストアに登録すると、対応デバイスすべてのストアからダウンロード可能になる。
4型台の小さな画面から大画面のテレビまで、幅広い画面サイズを1つのアプリケーションで対応するのは容易ではないが、開発ツールの「Visual Studio 2013 Update 2」では、異なる画面サイズや縦横の画面切り替えなども意識した画面設計を支援する機能が用意されているという。
このように、デバイスを超えて1つのアプリケーションを、多様なデバイスで動かせる環境を整えたうえで、さらにディスプレイサイズが9型未満のタブレット、およびスマートフォン、それにInternet of Thing(モノのインターネット)向けのWindowsを「完全無償化する」と発表した。
かなり大胆な方策とも思えるが、PCとして使われている分野(主にディスプレイサイズ10型以上)からの収益には影響しない一方、新規開拓の必要がある分野……すなわち、純粋なタブレット端末やスマートフォン市場へのWindowsの浸透力を高める効果は得られるだろう。
現在、8型のWindowsタブレットに注目が集まっているが、ライセンス料が無償化すればAndroidタブレットの価格に近付くこともできる。また、Windows Phone開発メーカーの呼び水にもなっていくはずだ。
Windows Phone 8.1では従来からの10メーカーにCromaxとPrestigioが加わり、12社が端末を提供する。Qualcommとともに端末ハードウェアのプラットフォーム化を発表したことも併せ、今後、Windows Phoneのエコシステムが拡大する要因となるかもしれない。
Microsoftは現在、ソフトウェアのライセンスを中心とした事業から「デバイスとサービス」を中心とした事業への転換を進めている最中だが、自社製の基本ソフト(OS)であるWindowsがPCだけでなく、利用シーンの異なる多様な端末へとWindows技術が浸透することで、サービスとデバイス(に組み込まれているOSの仕掛け)が連動する「Microsoftの世界」が描きやすくなる。
「よりよく便利な使い方」をつなぐのは、ストレージサービスの「One Drive」であり、オフィスツールとサービスが提供される「Office 365」だ。今後、Microsoftは個人向け、企業向けを問わず、生産性や利便性、あるいは場合によっては娯楽性を高めるサービス、Windowsファミリーと統合された形で提供し、加入型サービスでの収益を狙うことになるだろう。
例えば、前述の「ゼロ円Windows」には、1年分の加入権が付与されたOffice 365が添付されるという。まずはタブレットやスマートフォンにWindows、ならびにWindowsと親和性の高いサービスを浸透させ、「使ってもらう」ことを優先する戦略だ。
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