日差しがよく、丈夫な屋根は太陽電池モジュールの設置に適している。そのため、適地にある屋根を建物の所有者から借り受け、賃借料を支払って太陽光発電事業に取り組む企業は少なくない。
オリックスは国内最大のノリ産地である有明海沿岸の漁業協同組合の屋根を借りて発電事業を開始する(図1)。「30カ所の屋根をまとめて借りることができるため、漁業協同組合と契約を結んだ。1つ1つの建物の屋根は必ずしも大きくはないが、30カ所をまとめると約2.7MWに達する」(オリックス)。有明海沿岸が全国的に見て日射量が多いことも理由の1つだ。
2014年5月に建物ごとの着工を開始し、順次発電を始める。2014年9月までに全ての屋根で発電ができるようにする予定だ。広島県の企業であるソルコムが設計・調達・建設(EPC)を担当し、完成後の管理・運営(O&M)は大京のグループ企業であるオリックスファシリティーズが担う。太陽電池モジュールはシャープの製品を用い、合計で1万964枚を設置する。
30カ所を合計した出力は2741kW、想定年間発電量は286万6300kWh。これは一般家庭800世帯分に相当する。発電した電力は固定価格買取制度(FIT)を利用して全量を九州電力に売電する。
オリックスは2013年3月期から、地上に設置するメガソーラーで300MW、屋根設置で100MWを実現するという計画を進めており、佐賀県の事例は屋根設置の目標に含まれるという。
ノリの養殖になぜ地上設備が必要なのか
オリックスが借り受ける建物は図2に示したように、漁業、それもノリの養殖に関連したものが多い。図2の左はノリを培養する施設(白石町)、右はノリ集荷場(鹿島市)だ。
食品としてのノリは長方形状の薄い紙のような形をしている。これは加工した後の姿だ。加工の対象となる葉のような形をしたノリは、春になると果胞子と呼ばれる「種子」を作る。果胞子はカキ殻の内部に付着し、細い枝を伸ばしながら成長する。この枝を糸状体と呼ぶ。秋になると糸状体が次の「種子」である殻胞子を放出する。殻胞子は海中に設置されたノリ網に付着し成長して、葉のような形状の葉状体に育つ。これで生活史を一周したことになる。糸状体の段階で培養する施設が図2の左である。
佐賀県は国産のノリの約4分の1を生産する「ノリ王国」だ。これは遠浅で干満の差が大きい有明海が、ノリの生産に適しているため。有明海北部に分布するノリ養殖漁場の広がりを図3に示した。
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連載:エネルギー列島2013年版(41)佐賀
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