2014年4月2日、ルネサス エレクトロニクス(以下、ルネサス)が中小型液晶ドライバ事業を行う子会社「ルネサスエスピードライバ」(以下、ルネサスSPドライバ)の保有株式をアップルに売却するとの一部報道を受けて、ルネサスは「当社およびルネサスエスピードライバはさらなる成長のため、譲渡を含むさまざまな検討を行っている」とコメントし、何らかの再編を行う方針であることを認めた。
譲渡を含めた検討を行っているルネサスSPドライバは、スマートフォンやタブレット端末などに使用される中小型液晶ドライバICのメーカーで、2008年3月に設立された合弁会社だ。ルネサスが株式の55%を所有するとともに、シャープが25%、台湾の半導体メーカーPowerChip(力晶半導体)が20%、それぞれ株式を所有している。
ルネサス初の黒字達成にも貢献
経営再建中にあるルネサスにあって、ルネサスSPドライバが手掛ける表示ドライバIC事業は近年、比較的順調な成長を続けてきた事業だ。テレビなど向けの大型パネル用ドライバIC事業は、価格の下落や市場の縮小などの影響で2012年に事業撤退した(関連記事:ルネサス、テレビ用大型ディスプレイ駆動IC事業から撤退)が、中小型液晶ドライバについては、シャープなどとの合弁形態で事業を展開。中小型分野に強い国内パネルメーカーとも連携しつつ、海外モバイル機器メーカー向け案件を順調に獲得し、事業を拡大してきた。
ルネサス エレクトロニクスとして初の四半期黒字を達成した2013年10〜12月期も、業績拡大を引っ張った事業として車載向け半導体事業と並んで中小型液晶ドライバIC事業を挙げていた(関連記事:ルネサス、初の四半期最終黒字と四半期最高営業益を達成——2013年10〜12月期)。
アップルへの売却報道
2014年4月2日の一部報道などにより、ルネサスがルネサスSPドライバの株式を、ルネサスSPドライバの顧客でもあるアップルに売却すると臆測が浮上。報道を受けてルネサスは、「報道されている内容は、当社が発表したものではありません。当社およびルネサスエスピードライバはさらなる成長のため、譲渡を含むさまざまな検討を行っておりますが、現時点で決定した事実はありません」とのコメントを出し、譲渡を検討していることを認めた。
優等生、でも、孤立していた!?
中小型液晶ドライバ事業は堅調な事業ながら、モバイル機器向け半導体事業から撤退(関連記事:潰れるはずだったルネサスモバイル、ブロードコムが買収)したルネサスにとって、他事業とシナジーを見込みにくい事業となっているとみられる。ルネサス 会長兼CEOを務める作田久男氏は2013年10月の変革プラン発表時に「投資先として、私個人が強く固執しているのが、離れ小島のような“点”のものには投資しないということ。点と点がつながり、方向性のある“線”のものや、その線がつながり“面”になったものに投資する。投資も、ビジネスも立体であり、立体的だと自分なりに納得感を得たものに投資していく」と、事業間で連携しにくいものに対しては、投資を控えるとの意向を示していた。
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