相変わらず電力会社は楽観的な市場予測から抜け出すことができないようだ。10社が3月31日までに公表した2014年度の供給計画を見ると、10年後の2023年度まで年率0.2〜1.0%のペースで販売電力量が増えていくことを予想している。2023年度に向けて販売量の減少を想定している電力会社は1社もない(図1)。
一方で2013年度の販売電力量は中国・九州・沖縄の3社だけが前年を上回り、そのほかの7社は軒並み減少する。さらに2014年度も北海道・東北・東京の3社が増加を見込んでいるが、残る7社は減少を想定している。中部・北陸・関西・四国の4社は2年連続で販売量が減る見通しだ。企業と家庭で節電対策が進み、電気機器の消費電力も年々小さくなっている。
ところが各社は2015年度から再び需要が回復することを見込んで、それをもとに供給力の増加を図る方針だ。例えば東京電力は2013年度の販売電力量を2679億kWhと推定しているが、2023年度には2802億kWhへ4%以上の増加を予測。合わせて最大電力も4907万kWから5204万kWへ6%も上昇することを見込んでいる。
この2023年度の予測値は、2009年度の実績値と同じ水準である(図2)。2009年はリーマンショックによって全世界の景気が落ち込んだ年で、そのレベルまでは10年後に回復すると見ているわけだ。東京電力以外の各社も今後の経済成長に期待して、電力需要が伸びることを前提に中長期の計画を立てている。
ただし楽観的な計画を作る背景には、次のような事情もある。各社は原子力発電所の再稼働を推進するものの、現実には想定通りに進まないことは十分に予測できる。供給力が足りなくなる分を火力発電で補う必要があり、実際よりも多めの需要を公表することで原子力+火力の拡大計画を作らざるを得ない。
火力発電の増強に向けて各社は発電所の建設計画を前倒しするほか、他社からの調達に向けて2014年度から一斉に競争入札を開始する。関西電力が150万kWの火力発電を2021年度以降に調達するほか、東北電力が120万kW、中部電力と九州電力も100万kWを2020年度以降に調達することを決めている。
すでに東京電力は260万kWの火力発電を2019年度から調達するために競争入札を実施済みだが、実際には4分の1程度の68万kWしか確保できていない。調達価格を自社のガス火力の燃料費よりも安い1kWhあたり9円台に設定したためだ。2014年度中に各社が実施する競争入札の結果によっては、電力会社による火力発電の調達競争が激しくなる可能性もある。
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