NVIDIAは、米カリフォルニア州サンノゼにおいて、GPU技術者向けの会議「GPU Technology Conference 2014(GTC 2014)」を開催した(2014年3月24〜27日)。同イベントでAudi(アウディ)が、自動運転車を披露した。NVIDIAが2014年1月に発表したばかりの最新モバイルプロセッサ「Tegra K1」を搭載していて、「2014 International CES」でも大きな注目を浴びたものだ。Audiは今後、同自動車の完成までに3個のプロセッサを追加するとしている。
GTC 2014の基調講演後、自動運転車の開発を担当したエンジニアが質疑応答に対応した。その後、NVIDIAのCEOであるJen-Hsun Huang氏は、同社が今後のモバイル戦略として、携帯電話機市場ではなく自動車市場に注力していく理由について、説明を行った(関連記事:Androidと自動車の橋渡しを、NVIDIAがOAAで果たす役割)。
完成は2020年予定
Audiは、2020年をめどに自動運転車を完成させ、ユーザー試験に向けて一般道路を走行できるようにしたいとしている。自動運転車の開発前から電気設計チームを率いてきたAndreas Reich氏は、「完成時には、プロセッサを全部で4個搭載している予定だ」と述べている。GTCの会場で披露された自動運転車は、Tegra K1の他、ARMベースのプロセッサを1個搭載している。
自動運転車に搭載されているTegraは複数のタスクに対応し、さまざまな種類のセンサーからの入力を統合するセンサーハブとして機能している。これらのセンサーとしては、4つのカメラや、フロントバックレーダー、フロントベースのレーザースキャナ、超音波センサーなどがある。
Reich氏は、「最も重要な目標は、“安全な自動車”を開発することである。まずは、ユーザー試験で一般道路を走行できるよう、政府からの承認を獲得したい」と述べている。初期の試作車は、米国シリコンバレーとラスベガス、ドイツでテスト走行を行っている最中だ。
“モバイル機器”の定義が変わる
Huang氏は、基調講演の後で行ったアナリストとのカンファレンスコールにおいて、同氏が新たに掲げたモバイル戦略の中心として、なぜ携帯電話機ではなく自動車を選んだのか、その理由を説明した。ウォールストリートの関係筋は、これを待ち望んでいたに違いない。彼らは、「Tegraは、スマートフォン/タブレット端末市場のけん引役としては不十分だ」と感じていたからだ。
Huang氏は、「携帯電話機市場は、たまたま急激な成長を遂げることができたにすぎず、コンピューティングの将来が同市場だけにかかっているというわけではない。遠い将来、“モバイル機器”とは単に、クラウドに接続された、電力効率の高い小型コンピュータのことを意味するようになるだろう。自動車や掃除機ですらも、単なる“モバイル機器”と呼ばれる日が来るかもしれない」と述べる。
「自動運転車は、われわれが所有することのできる、最も素晴らしいロボットと言っていいだろう。未来のクルマは“4つの車輪が付いたコンピュータ”となり、これまでできなかったことが実現できるようになる」(Huang氏)。
同氏は、「NVIDIAは、インフォテインメント、デジタルクラスタ、ドライバーアシスタントという3つの分野向けにプロセッサを提供する、唯一の半導体メーカーだ」と述べる。将来的にNVIDIAの主な投資分野は、車載分野、クラウドコンピューティングにおけるGPU、そして産業分野向けのプロセッサ「Tesla」になるだろう。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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