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「ギークとアニメ好きが近いのは日本の強み」「攻殻機動隊の中に全てはある」──SFアニメに見るウェアラブルの未来

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 「攻殻機動隊」の中に全てはある——「日本のアニメに見るウェアラブルの未来」をテーマに、ウェアラブル端末と人間の未来を語るパネルセッションが「Wearable Tech EXPO in TOKYO 2014」 (25〜26日、東京ミッドタウン)で行われた。

 登壇したのは、眼鏡型ウェアラブルデバイス「Telepathy One」を開発するTelepathyの井口尊仁社長、夏野剛慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特別招聘教授、SF小説家の冲方丁さん、映画監督の本広克行さんの4人。「攻殻機動隊」シリーズなどを手がけるProduction I.Gが本イベント用に制作したプロモーションビデオからセッションは始まった。

 夏野さんは冒頭、「ウェアラブルデバイスは日本が先頭を走れる分野。ハードとソフト両方を組み合わせることはもちろん、アプリケーションのイメージをはっきり持って想像力を発揮するのはみなさんを始め『攻殻機動隊』で育った世代には得意なはず」と話し、会場を鼓舞した。

photo井口尊仁さん

 井口さんは約20年前にプログラミングを学び始めた理由──「SFの世界のドキドキわくわくを現実にしたい」が現在も自分のモチベーションの1つだという。「米国では、テクノロジー寄りのギークな人とアニメファンにずれを感じる。日本の技術者は小さなころからSF的な世界観に親しんできている人が多く想像力も豊かなのに、出てくる製品としては弱い。ITの新しい動きが常に米国から来ているのは悔しい」と嘆くと、夏野さんが「今の経営層の60代がIT革命やデジタルデバイスのもたらしたものをリアルに理解していないので判断できないだけ。おっさんたちがいなくなれば、ウェアラブルの未来は日本に来ます」と断言するシーンもあった。

photo冲方丁さん

 近未来をフィクションで創作する側の意見も。冲方丁さんが「攻殻機動隊ARISE」でシリーズ構成と脚本を手がけた際には「SFっぽく、をやりすぎないこと」を意識し、「現実の延長にありえる生活を描くようにした。例えば建物や物体が意味なく浮いてたりしないように」という。

 本広監督は「プライバシーや法律の面で現実の社会ではまだ抵抗が大きそうなことも、アニメであれば視聴者には受け入れてもらえる」としつつ、「アニメだというだけで敬遠する人も多い」面も指摘。世の中に広く価値観が広まっていくには、リアルなデバイスや体験が普及することが大切と見解を示した。

「無駄な抵抗はやめて受け入れていければいい」

photo本広克行監督

 ウェアラブル端末はどこまで感覚を代替するか?──という議論も盛り上がった。「うどんをずるっとすする感覚はまだデジタルではできないと思う、味覚は電子化できるか」(井口さん)、「例えば脳に刺激を与えたら飲んでる水がロマネ・コンティに思えるとか」(夏野さん)、「うーん、それって幸せなんですかね。やっぱり食べる行為はリアルに感じることが重要な気が」(本広監督)、「最終的には『電子で味わえないなんてかわいそう』という方向に価値観が逆転して『え? 未だに固形物なの?』となっていくのでは」(冲方さん)

 PCという箱を介して操作するのと、眼鏡として装着して自分自身がコンピュータの一部になるのとは全く違う感覚。まだまだ多くのことが機械に代替されていき、増えていくのは空白の時間のはず——と井口さんが実感を話すと、冲方さんが「古代ローマで『スクール』が生まれたのは奴隷制度によって余暇が生まれたからで、現代の私たちもテクノロジーによって“奴隷”を得ている状態と言えそう。技術の進化で生まれる自由な時間こそ人間を人間らしくするのでは」と応じた。

photo夏野剛さん

 「ウェアラブル端末はまだ始まったばかり。社会の抵抗が大きい部分もあるかもしれないが、時代の流れに抗わず、無駄な抵抗はやめて受け入れていければいい。僕らが夢見たSFの世界は近づいている、『攻殻機動隊』の中に全てはある」(夏野さん)

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