タブレットやスマートフォン向けの液晶パネルで世界最大手のジャパンディスプレイは、新規株式公開(IPO)の価格を仮条件レンジの下限に決定した。海外投資家の需要が低調なことを受けての判断だ。
日本の株式市場はここ1年アジアで最も好調に推移している市場の1つ。その好調ぶりを背景にジャパンディスプレイは設備投資資金の調達を行い、政府系ファンドである産業革新機構は保有株の一部を売却して資金を回収する。ジャパンディスプレイのIPO価格は1株当たり900円に決定したため、公募と売出を合わせた調達の総額は3185億円(30億8000万ドル)となる。
またジャパンディスプレイは海外投資家への割り当てを当初予定の45%から37.5%に縮小した。米Appleの「iPhone」と「iPad」向けのパネル製造が事業の30%と大きな比重を占めていることや、液晶パネルの価格が低下していることへの懸念を考慮した結果だ。
中小型液晶パネルは通常、個々の供給契約に合わせて作られるため、価格の追跡が難しい。だがディスプレイサーチの田村喜男上級副社長によれば、中国のスマートフォンメーカー向けの5インチ液晶パネルの平均価格は2013年3月から2014年2月の1年間に34.7%下落したという。
ただし同氏によれば、最悪の時期は過ぎたようだ。
「価格は2013年下半期に大きく下落したため、今後は下げ止まりが予想される」と同氏は語る。
ジャパンディスプレイは2012年、赤字が続いていた日立製作所とソニーと東芝の液晶パネル事業を統合して誕生した会社だ。同社は3月3日、東京証券取引所で3月19日に予定しているIPOの公開価格の仮条件を900〜1100円のレンジに設定すると発表していた。
2月に発表された当初の上場計画では、想定価格は1100円に設定されていた。つまり、3日の時点で既に公開価格は弱気の設定になっていたことになる。
前途に対する懸念
ジャパンディスプレイは今回の上場で増資後株式資本の約60%に当たる株式を放出し、新株発行で1260億円を調達して液晶パネル製造の設備投資などに充当する計画だ。
さらに今回のIPOでは、産業革新機構が保有株の一部を売却し、出資比率を現在の86.7%から3分の1強にまで縮小する。産業革新機構が当初ジャパンディスプレイに出資した額は2000億円だが、今回のIPOでその価値は約2倍に膨らむことになる。
オーバーアロットメント分の162億円を加えれば、IPOの総額は約3350億円となる。
海外投資家はジャパンディスプレイの前途について懸念を示しているが、同社は3月末締めの現会計年度の営業利益について、前年の18億円から304億円に拡大すると予想している。千葉県茂原市にある工場が稼働を開始した影響が大きいという。
インベストラストの代表取締役である福永博之氏も、ジャパンディスプレイの小型パネル事業の今後について楽観的だ。
「市場は依然として成長が予想されている。従って、ジャパンディスプレイの小型パネル事業の売上高と利益も伸びるはずだ」と、同氏は語る。
日本では安倍晋三首相のリフレーション政策によって株価が回復し、IPOが勢いを盛り返している。判断基準となる日経平均株価は過去17カ月間に約7〜8割上昇している。
ジャパンディスプレイのIPOのグローバルコーディネーターは野村証券、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスが共同で務める。
(1ドル=103.3250円換算)
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