シスコシステムズ(以下、シスコ)は2014年2月25日、同社のネットワークOS「Cisco IOS」とオープンソースの「Linux OS」を統合した、「フォグ(霧)コンピューティング」向けのソフトウェアプラットフォーム「Cisco IOx」(以下、IOx)を発表した。IOxを活用することで、製造ラインや電力、交通システムなど用途別の分散処理システムを容易に構築することが可能となる。IOxに対応した製品群は2014年春より順次出荷する計画である。
用途別の分散処理システムを容易に
IoT(Internet of Things)時代を迎え、インターネットに接続される電子機器やセンサーデバイスの数が拡大している。その動きは一段と加速しており、シスコのIoTグループ担当バイスプレジデント兼ジェネラルマネージャを務めるGuido Jouret氏は、「2020年までに最低でも500億台がインターネットに接続される」と話す。こうした中で同社は、センサーデバイスなどから吸い上げられるビッグデータが、クラウドコンピュータに集中するのを避ける仕組みとして、その前段で分散処理を行うフォグコンピューティングを提唱している。
ネットワークのエッジに位置するルータなどネットワーク機器にデータ処理機能を追加すれば、大量のデータを事前に処理することができる。その上でクラウドコンピューティングと連携し、さまざまなデータやトラフィックの処理を行えば、現場における状況の変化にも迅速に対応でき、柔軟かつ的確なサービスの提供が可能となる。
この分散処理環境の実現に向けてシスコは、IOxやソフトウェア開発環境を用意した。IOxを搭載したネットワーク機器は、従来のネットワーク機能に加えて、Linux OS上で動作するアプリケーションソフトウェアを組み込むことで、さまざまなデータの処理をデータが発生した場所により近いエリアで実行することができる。
例えば、製造ラインでは各種センサーから出力されるデータを常にモニターしておくことで、製造装置の故障や異常を事前に察知することができる。この結果、予防保全につながり生産性が向上することになる。スマートグリッドへの応用では、エネルギーロードバランシングを分散処理環境で実行すれば、エネルギーの供給状況や料金体系に基づいて、最適な代替エネルギーへの切り替えなどを自動で行うことができる。交通システムへの応用も注目されているという。救急車が患者を搬送する際、患者のデータを病院の医師にリアルタイムで送信しつつ、信号機に取り付けられたスマートカメラが救急車を自動認識して、緊急車両を最優先で走行させるように信号機の同期制御を行うことができるという。
記者説明会には、同社のパートナー企業としてsmart-FOAとPreferred Infrastructureの2社も参加した。smart-FOAは、製造現場の生データに説明データや背景データを付加することで、エンドユーザーにも理解できる情報に加工するFOA(Flow Oriented Approach)と呼ぶコンセプトを提唱している。Preferred Infrastructureは、次世代コンピュータアーキテクチャ「エッジヘビーコンピューティング」を提唱する企業である。両社とも分散処理という開発コンセプトが合致しており、フォグコンピューティングとの連携を強めていく考えである。
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