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「Windows Phone」次期アップデート詳報──日本でも発売される? Microsoftが示すその戦略とは

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MWC発表会のメインテーマ「Windows Phoneの次期アップデート」

 第3のモバイルOSと呼ばれつつ、トップ2のAndroid、iOSと大きく水をあけられている「Windows Phone」。国内では特にWindows Phone 8搭載端末が投入されていないので影は薄いかもしれない。

photophotoWindows Phoneの現況まとめ。主に新興国や欧州方面で強いことがわかる

 だが、海外では「Lumia 520」といったヒット機器の登場により主に新興国でシェアを大きく拡大している。そのためか、成長率が100%を越えていたり、OSのシェアで(Androidに次いで)2位を獲得する市場も世界のいくつかで存在する。日本のようにまったく搭載機器がリリースされていない地域も存在するが、欧州、中東、アフリカ、アジア、南米などでの需要はかなり高いのである。一方、Firefox OSといった新興勢もこうした地域でのシェア拡大を狙っており、モバイルOSの主戦場が新興地域で、かつミッドレンジ以下の端末へとシフトしていることがよく分かる構図だ。これは、今回のMWC 2014での大きなテーマの1つと筆者は考えている。

photoWindows Phone 8の過去のアップデート。現在提供されているのはUpdate 3と呼ばれるもので、新SoCや大画面サポートが含まれる

 これまでWindows Phone 8は、「Update 1」「Update 2」「Update 3」というかたちで1年間で3度にわたってマイナーアップデートを行ってきた。筆者も過去1年間、Lumia 920でWindows Phone 8に触れてきたが、この数々のアップデートでようやく「ライバル製品に近いレベルの機能を実装」するに至ったという感想を持っている。日本語処理・表示では文字化けなどが起こる課題があり、このまま日本市場へ投入する現時点でまだ完成度が低いという印象はあるのだが。

 ともあれ、こうした状況を打破するのが、Microsoftが予告する2014年春過ぎの登場を予定する「Windows Phone向け次期アップデート」になるとみられる。こちら「Windows Phone 8.1」のような名称は付与されないようで、現時点はあくまで「次期アップデート」とするのに留めているが、このアップデートにより待望のVPN機能が加わるほか、うわさのレベルではUIの大幅刷新やWindows ストア/Windows Phone Storeの統合がうたわれている。詳細は2014年4月初旬に行われる、Microsoftの開発者会議「BUILD」の講演で説明が行われるはずだ(MWCの場では、プレビューでの紹介にとどまった)。

 Microsoft自身は、Windows Phoneの市場拡大にはハードウェアパートナーとの堅密な協力が欠かせないことをもちろん自覚しており、2014年中での買収完了が見込まれるNokiaモバイル部門“以外"のパートナー関係も強化する方策を模索している。具体的にはWindows Phoneが対応/動作できるSoCを増やし、特定ボタン設置の強要といったハードウェア設計に関する要件を緩和することで、製品バリエーションを大幅に拡大することが今回表明された。

photophotoWindows Phoneの次期アップデートにおけるエンタープライズ向けの強化点。ついにVPNサポートが含まれた。そのほか認証系の機能が強化されている(画像=左) 開発体制見直しにともない、OEM向けのハードウェア関連サポート充実を表明。対応SoCの拡大だけでなく、中国向けのネットワークサポート拡充などがポイント(画像=右)

 例えば対応SoCを増やせばハイエンドからローエンド、さらには対応ネットワーク技術の拡大により、各国/各市場のローカルブランディングを強化できるようになる。ローエンド市場を見込み、512Mバイトメモリ/4Gバイトストレージといったローコスト/極小仕様も新たに定義される。ハードウェア設計については、これまで「本体正面に3つのボタン」「カメラ撮影用ハードウェアボタン」を設置を──というかたちで設定されていたハードウェア設計のルールを緩和し、すべてソフトウェアボタンでの実装も許可される。こちらについては、従来からプラットフォームのライセンサー(例えばMicrosoftやGoogle)がハードウェア仕様を細かく規定することでOEMの自由なハードウェア設計や競争を阻害しているという意見は根強くあったわけだが、今回のMicrosoftによる規制緩和はこうした規制が間違いであり、考えを改めたことを示しているのではないかと筆者は考えている。

 このほか、市場ニーズの反映という意味で、新興国市場で強い人気がある「デュアルSIM」仕様をWindows Phoneでもサポートすることも示した。デュアルSIMにより、異なるネットワークを1つの端末で同時に使い回せることが可能になる。一般的には音声通話用のSIMとデータ通信用のSIMをあらかじめ差しておき、例えば海外旅行/出張では既存の電話番号を生かしつつも、現地の低価格データ通信SIMカードを入手して──といった使い方ができる。Microsoftのジョー・ベルフィオレ氏が手にしたQualcommのリファレンス端末では、デュアルSIM仕様を象徴するようにアンテナピクトアイコンが画面上に2つ表示されていた。デュアルSIM状態のWindows Phone端末では、通話/メッセージアプリがSIMごとに2つ共存しており、用途に応じて使い分けられるようだ。

photophoto主に新興国向けで人気のデュアルSIM構成をサポート。データ用と音声通信用で利用回線を分けられる。ベルフィオレ氏が手にしていたQualcommのリファレンス上にデュアルSIM対応のハードウェアとソフトウェアを載せた端末。画面をよく見ると画面上部にアンテナピクトアイコンが2本立っている

OEM重視戦略を再び強調するMicrosoft

photoMicrosoftコーポレートVP兼ワールドワイドOEM担当のニック・パーカー副社長

 今回MWC 2014で開催されたMicrosoftのプレスカンファレンスにおいて最大の収穫ともいえること、それは「同社が改めてOEM戦略重視を打ち出したこと」だ。

 Surfaceブランドでというハードウェアを自らリリースしたり、Windows Phoneにおけるグローバルシェアが6割を超えるといわれるNokiaを傘下に収めたりと、なにかとパートナーであるOEMと競合する戦略を打ち出していた最近のMicrosoftだが、「市場ニーズの汲み取り」「ハードウェアのバリエーションの拡大」において、パートナーの存在は不可欠であることを改めて認識したように思える。

 ただ、すでにハイエンド向けスマートデバイス市場は飽和感が強まり、かつ競争も激しいため、こちらは前述のようにミッドレンジ以下の市場での勢力拡大を目指した施策だといえる。


photophotoQualcomm Reference Designを使ってOEMのハードウェア設計が容易に。パートナー向けのハードウェアポータルサイトも開設した

 米MicrosoftコーポレートVP兼ワールドワイドOEM担当のニック・パーカー副社長は、Qualcomm Reference Designを活用してOEM各社がハードウェア設計を行うことを容易にし、ローエンドプラットフォームでの開発コスト削減や市場投入サイクルの短縮など、Windows Phone自体のライバルに対しての価格競争力を高めるメリットを説明している。同時に、通信事業者にとっては「ホワイトラベル」と呼べる自社ブランド展開や、規模は小さいローカルブランドとの協業など、さまざまな戦略が採れることもメリットとして挙げている。これは特にMVNOやプリペイド事業者、中小規模キャリアの製品展開では有効と考えられ、Windows Phoneをベースにしたユニークなビジネスモデルの登場が期待できるといえる。

 とはいえ、パートナーが少ないのは現時点Windows Phoneの最大の弱点。こちらについては、一強のNokiaに加え、HTCやHuawei、Samsung、ZTEといった既存大手、さらにLenovoとLGの参加も新たに発表された。こちらはFoxconnといったODM大手のほか、地域のローカルメーカーを巻き込み、今回の新戦略で少しずつ市場拡大を図っていくことになる。

photophoto新たにLenovoとLGも加わった2014年2月現在のパートナー一覧。ただ、日本国内向けの専用ハードを開発するメーカーはなく、まだ日本市場はターゲットに含まれていない

 最後に、2014年2月現在はWindows Phoneのグレーアウト地域となっている(製品を販売していない)日本はどうなのか。今回は発表こそ発表はなかったが、ソニーがWindows Phone端末を発売するうわさがあったり、パナソニックよりWindows 8をベースにした組み込み機器向けエディション Windows 8 Embedded Handheldを採用したビジネス向けタブレットが登場することもあり、ある特定の分野の機器からでも、日本の新OEMが登場してくることを期待したい。


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