かつて半導体産業を育てたシリコンバレーの投資家のほとんどは、よりよい投資先としてWeb関連の新興企業に乗り換えた。そのため、今後何が半導体のイノベーションの源となるのか、全く明らかになっていない——。
これは、半導体分野で経験を積んだCEOや投資家から成るパネリストが、米国カリフォルニア州で開催された国際会議 「International Solid State Circuit Conference(ISSCC)」で達した結論だ。
AppleやGoogle、Microsoftなど少数の大企業は、半導体への投資を増やすことで垂直統合を進めている。中国やインドなどでは、政府の介入について賛否両論はあったものの、半導体産業への投資は続いている。また、ほんの一握りではあるが、少数の半導体新興企業に資金を提供する投資家もいる。
パネリストとして、CEOのT.J. Rodgers氏(Cypress)、Scott McGregor氏(Broadcom)、Nicky Lu氏(Etron Technology)、投資家のAndy Rappaport氏(August Capital)、John Doerr氏(Kleiner Perkins Caufield and Byers)、Dado Banatao氏(Tallwood Venture Capital)らが参加し、活発な議論を交わした。以下に、その一部を抜粋する。
Qualcomm Atheros、Silicon Image、SuVolta、Transmetaなどに投資したRappaport氏は、彼が“半導体のイノベーションギャップ”と呼ぶところの現象について、率直な評価を行うことから議論を始めた。
半導体産業の歴史は、新興企業によるイノベーション(革新)の歴史でもある。だが、われわれは今や新しい時代に入りつつある。「ベンチャーキャピタルから資金提供を受ける」「米国を拠点とする」といった、かつての新興企業のパターンは既に崩れ、その傾向はわずかに残っているにすぎない。2012年と2013年は、新興企業の数そのものが少なかったので、誰もデータを追うことができなかった。
近年、半導体業界の新興企業はひどい投資先となっている。2011年以降、投下資本を100%近くまで回収できたケースはめったにない。もし今、あなたが半導体企業に投資したら、投下資本のうち60%を失う可能性が50%もある。そんな事態になれば、つらいだけだ。どうにかしてリスクの対価を得ようと躍起になるだろうが、ここ数年はわれわれですらリターンを得ていないのが現状である。
マスクコストなどの要因により、半導体新興企業の設備投資額は高騰した。中でも最も高くつくのが“検証”だ。安価な物を作れば、競合品とは異なる価値を十分に生み出すことはできない。さらに、最近では、複雑な製品を投入することで大手メーカーを驚かせることは難しくなっている。
新興企業が再び強固なパイプラインを得ることはないだろうから、半導体のイノベーションは、それ以外のところからやってくるに違いない。
Copyright© 2014 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.