ソフトバンクが2月12日、2014年3月期 第3四半期(13年4〜12月)の決算説明会を行った。売上高は前年同期比94%増の4兆5617億円、営業利益は前年同期比49%増の9242億円、純利益は前年同期比58%増の4882億円、償却前の営業利益(EBITDA)は前年同期比49%増の1兆2997億円となった。売上はSprint事業の1.7兆円を含むが、過去最高を記録した。営業利益は、ガンホーとウィルコムの子会社化に伴う一時益として2539億円が含まれる。
ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は「営業利益は、ガンホーとウィルコムの一時益を除いても伸びているが、2014年度は一時益なしで1兆円の営業利益を達成したい」と意気込みを話した。Sprint、ウィルコム、イー・モバイルの業績を含めたものではあるが、「売上、営業利益、純利益……どの角度から見ても、ドコモとKDDIを上回った」と胸を張った。
「Androidでもナンバーワン」になった——孫氏
国内事業に目を向けると、2013年後半はNTTドコモがiPhoneを発売したことが大きなトピックだった。これを受けて「ソフトバンクが不利になるのでは?」とみる向きもあったが、結果的にiPhone 5s/5cのシェアはソフトバンクが39%でトップだった(外部調査会社の主要量販店での販売台数調査による)。「KDDIがiPhoneを扱ってもソフトバンクの増益は続いた。ドコモがiPhoneを扱うと聞いたときは(ユーザー離れを)大変危惧したが、国内最後の危機を乗り切った」と孫氏は胸をなで下ろす。
ソフトバンクの2013年の年間純増数は344万で、イー・モバイルとウィルコムを含めると410万となる。ドコモは119万、auは280万なので、ソフトバンク単体でも年間純増数はトップとなる。ソフトバンクは2008年から2013年まで、6年連続で年間純増数1位となった。Sprintを含めると、累計契約数は1億を超えた。「日米で念願の大台(1億)を突破した。MNPで2万、3万だといっても1億からすれば誤差だ」と孫氏は桁違いの数字をアピールした。
ARPUはドコモが4510円、ソフトバンクが4490円、KDDIが4480円でほぼ横並び。孫氏は2008年以降のデータと比較し、「2社(ドコモとKDDI)は一直線で(ARPUが)下がっているが、我々は歯を食いしばって保っている。他社がいくらユーザー数を増やしても売上が横ばいなのは、1人あたりの売上が下がっているからだ」と分析した。
携帯業界では「ソフトバンクといえばiPhone」のイメージが強いが、「Androidでもナンバーワン」になったと孫氏は話す。これは「2014年1月における、ソフトバンク、イー・モバイル、ウィルコムの、Androidスマートフォンの新規契約による販売シェア」が、ドコモとKDDIを抑えてトップだったことを指したもの。機種変更は含まれないので、累計販売台数のシェアで1位になったわけではない。「『なんだ、イー・モバイルとウィルコムを足したのか』と言われそうだが、私に言わせれば『いいじゃないか』と。どのように名乗ろうが、ソフトバンクグループとしてAndroidシェアを抜いた」と孫氏は言い切る。
新しい料金プランは高い? 分かりにくい?
「これからのブロードバンドの中心は、モバイルのLTEになると思うので、一気に伸ばしていきたい」と話す孫氏は、音声定額とパケット定額をセットにした新しい料金プランにも言及し、「VoLTE時代の革新的な料金」と紹介する。通話回数とパケット通信量に応じて3つのプランを用意し、「Sパック」なら、月額5980円(税別)で3分以内の通話が月50回まで、2Gバイトまでのパケット通信が可能になる。
「これからのモバイルは、音声からデータ通信の時代になり、音声通信もLTE網で提供されるので、実質話し放題無料のサービスを提供したい。(MパックとLパックは)5分以内なら1人あたり毎月1000回電話をかけられる。ほとんどの人にとっては話し放題の体験だ。(Sパック)は、現在のAndroidスマートフォンのパケット定額料(5980円※こちらは税込なので、厳密には新料金プランの方が高い)と同じ料金で、さらに月50回で3分以内の音声通話が無料になる」と孫氏は新料金プランのメリットを説明する。
質疑応答で挙がった「新しい料金プランは、高い、分かりにくいという意見も出ている」という指摘に対して孫氏は「これほどシンプルな料金プランはないと思う」と反論。「各社が提供しているさまざまなキャンペーンは非常に複雑怪奇だが、我々のプランは“話し放題1000回まで”など明瞭会計だと申し上げている。ウィルコムの『だれとでも定額』では、1回の通話で5分以上話すケースは非常に少ない」とし、妥当なプランであることを強調した。
もちろんすべてのユーザーにとってお得とは限らないことは孫氏も理解しており、「そういう人のために、今までの料金体系も残しているが、8000〜1万円くらい通話をする人にとっては、(新プランの方が)はるかに割安になる」と説明した。
他社が追随するかについては「分からない」としつつも「少なくともアメリカでは、音声通話はアンリミテッドコールが料金体系の中心になっている。『ホワイトプラン』を出したときも、最初はいろいろな批判があったが、他社が追随したことを思うと、似たようなことになるのでは」と予測する。
なお、VoLTEの導入時期について孫氏は「近い将来」とするのみで、明言はしなかった。
スマホの通話接続率とパケット接続率は1位を継続
スマートフォンの通話接続率とパケット接続率は、2014年2月も、ドコモとKDDIを抑えて1位になったことを孫氏は紹介した。なお、通話接続率は900MHz帯(プラチナバンド)に対応するスマートフォンに限られる。駅、大学、ショッピングモール、百貨店など、ランドマーク別のパケット接続率についても、スキー場を除いてソフトバンクが1位になった。ただ、スキー場もKDDIには勝っており、孫氏は「少なくともauさんは完全に抜いた。(KDDIは)どこでも800MHzなどと宣伝しているが、事実は事実だ」と胸を張った。
中国アプリストアの筆頭株主に
コンテンツについては「ゲームを制するものが、スマホのコンテンツを制する」と孫氏は話し、引き続きゲームに注力していくことを示した。ガンホーの営業利益は前年同期比で10倍となる912億円となり、孫氏は「順調に業績を伸ばしている」と評価。またガンホーはGoogle Play売上の世界売上ランキングで、2013年2〜12月に11カ月連続で1位を記録した。
ソフトバンクとガンホーが買収したゲーム会社 スーパーセルは、App Storeの世界売上ランキングで、同じく11カ月連続で1位を獲得した。スーパーセルの人気ゲーム「Clash of Clans」はAndroid向けにもリリースされ、売上ランキングが上昇している。
また孫氏は、ソフトバンクが、中国でモバイルアプリストアを提供する「Wandoujia」の筆頭株主になったことも紹介した。「中国のスマートフォンは、Androidが売上の88%だが、実はその中でGoogleのAndroidは6%に過ぎない。Google以外のオープンなAndroidが73%で、オープンAndroid向けのアプリストアが乱立している。Wandoujiaの中国での普及率は50%なので、中国のAndroidアプリストアにおける重要なポジションを、ソフトバンクはすでに持っている」(孫氏)
順調に反転加速している米国事業
2月11日に決算発表を行ったSprintについては、売上が12年度の271億ドルから286億ドルの6%増となった。孫氏は「ソフトバンクが買収して利益率も反転した」と胸を張る。ネットワークの増強も継続し、連結設備投資は13年度の75億ドルから14年度は80億ドルに上がる見込みだ。
電話をかけたのに通話ができなかった率を示す「呼損率(ボイスブロックレート)」は、Sprintのネットワーク強化施策「ネットワークビジョン」の実施前と比べて41%改善した。通信速度はLTE導入後、13倍に向上した。
帯端末の卸売り事業を展開する米ブライトスターの買収は1月30日に完了し、ソフトバンクが70%株式を保有することになった。ブライトスターはスマートフォン向けアクセサリーや中古携帯の下取りサービスも扱っており、「スケールメリットを追求したい」と孫氏は意欲を見せる。
米T-Mobile買収の可能性については「さまざまな噂が報道されているが、現時点でソフトバンクの経営者としてコメントすべき状況ではないと判断している。ただ1つだけ言えるのは、アメリカは決して競争状態が激しい状況にない。ネットワークも決して世界一のレベルではないし、価格競争も激しくない。上位2社(VerizonとAT&T)の寡占状態にある」とコメントした。
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