IT業界の草分け的存在である米Microsoftは近年、会社の老化に直面しており、ベテランと若手の力を融合させることで巻き返しを図りたい考えだ。ただし、新CEOのサトヤ・ナデラ氏にとって、共同創業者ビル・ゲイツ氏とスティーブ・バルマー元CEOの監視下での変革推進は難しい取り組みとなりそうだ。
ナデラ氏はインド出身の46歳。これまではMicrosoftのエンタープライズ部門の責任者を務めていた。同氏はこの先、Microsoftの新しい方向性を開拓するという途方もない重責を担うことになる。ただし、ゲイツ氏が技術アドバイザーとしてサポートに加わり、戦略はバルマー氏が取締役会とともに策定したものを引き継ぐことになる。
情報筋によれば、CEO就任を打診されたそのほか複数の後任候補は、その責任の大きさゆえに難色を示したという。その中には、変革推進者として実績のあるFord Motorのアラン・ムラリー氏も含まれていた。
ゲイツ氏は取締役会長の座を退き、新会長には社外取締役のジョン・トンプソン氏が就任する。創業39年のMicrosoftにとって、今回の人事刷新は経営陣の世代交代を意味するものだ。かつてPC革命を巻き起こしたMicrosoftだが、モバイル革命に出遅れ、近年は長期的な企業アイデンティティの確立に苦戦している。
Medtronicの元CEOでハーバード大学経営大学院教授のビル・ジョージ氏は、次のように語る。「Microsoftの経営は、CEOのナデラ氏、製品アドバイザーのゲイツ氏、取締役会を束ねるトンプソン氏による3頭体制となった。この3人で上手くやっていけるかが重要な鍵となる」
「問題は、製品面と人材面の両方で必要とされている変革を、ナデラ氏が本当に進めさせてもらえるかだ」と、同氏は続ける。
2月4日、Microsoftの株価はNASDAQ市場で0.4%値を下げ、36ドル35セントで取引を終えた。
新生Microsoftはソフトウェアライセンス提供から「デバイスとサービス」の企業へと軸足を移し、優れたオンラインサービスと魅力的なデバイスの両方をまとめて提供することでAppleの成功に続きたい考えだ。
この戦略は昨年退任の意向を発表したバルマー氏が定めたものだが、投資家には不評だ。投資家は、Microsoftがモバイルデバイスへの多額の投資をやめるか(同社はフィンランドNokiaの携帯電話事業の買収を決めている)、モバイル市場をリードするAppleやGoogleに対抗できる新製品を開発するかのどちらかを望んでいる。
「大局的に見れば、それほど大きな変化はなさそうだ。Microsoftは2013年に打ち出した戦略どおりの方向を目指している」と、証券会社McAdams Wright Ragenのアナリスト、シド・パラク氏は語る。
ゲイツ氏は4日、「クラウドコンピューティングの知識が豊富なナデラ氏は、モバイルコンピューティングの新時代にMicrosoftを率いるのに適任」との考えを示した。ゲイツ氏は技術アドバイザーとしての仕事に自分の時間の3分の1をあてる方針を明らかにしており、今後、ワシントン州レドモンドのMicrosoft本社周辺では再びゲイツ氏の姿を見かける機会が多くなりそうだ。
「ナデラ氏には、今の時代にMicrosoftを率いていくための適切なバックグラウンドがある。モバイルコンピューティングの世界には課題があり、クラウドの市場にはチャンスがある」と、ゲイツ氏は語る。
ナデラ氏は今回の昇進で大幅な昇給も果たした。同氏は次期会計年度に、120万ドルの給与のほか、その3倍の額を上限とする現金賞与、1320万ドルの株式報酬を受け取る見通しだ。
この金額は前任のバルマー氏の報酬を大きく上回る。バルマー氏の2013年の報酬は総額で130万ドルに満たなかった。これは、バルマー氏が株式報酬の受け取りを拒否したことによる。バルマー氏は120億ドル相当のMicrosoft株を所有していることから、株式報酬を不要と判断した。
もっとも、ナデラ氏の報酬はIT業界のスーパースターであるマリッサ・メイヤー氏と比べれば控えめだ。メイヤー氏は2年前に米Yahoo!のCEOに就任した際、総額7000万ドル以上の報酬パッケージを受け取っている。
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