リコーが2013年11月に発売した、周囲360度をシャッターボタン1つで撮影できる全天球カメラ「Theta(シータ)」。Thetaには2つの超広角レンズが搭載されており、一見してカメラとは分からないほど、従来のカメラとは異なる形をしている。
Thetaの側面にあるシャッターボタンを押すと、上下前後左右合計360度の全空間を2つのレンズで約180度ずつ分担して1度に撮影。画像処理でつなぎ合わせ、本体内部に1枚のパノラマ写真データとして保存する。スマートフォンやPCの専用ビューワでこの画像を見ると撮影者の回り全天球360度を、上下前後左右、ぐるぐる回して見ることができるようになっている。
実際に撮影した写真を見てもらったほうが理解が早いと思うので、こちらをご覧頂きたい。
Thetaの使い方など、より詳細はこちらの記事「取り巻くすべてを撮影する全天球カメラ「RICOH THETA」で遊ぼう(ITmedia デジカメプラズ)」に詳しく書かれているので参照いただくこととして、Thetaのいいところを私なりに書き出してみると、(1)シャッターを押すだけで3Dパノラマ写真が簡単に撮れる、(2)臨場感のある写真表現、(3)独特の視点とインパクト——の3点。順番に見ていこう。
(1)シャッターを押すだけで3Dパノラマ写真が簡単に撮れる
Thetaの撮影はとにかくシンプルで、シャッターを押せば撮れる。これまでの3Dパノラマ写真は、カメラをぐるぐる回して撮るなど、あまり手軽に撮影できるものではなかった。Thetaなら本当にビックリするほど簡単に、撮影ができるのだ。
例えば初代ウルトラマンの変身ポーズのように、Thetaを片手で高々と頭上に掲げ、そこでシャッターボタンを押すと、上の写真のように、撮影者の回りの一瞬が、丸ごと記録される。
このとき、撮影時に撮影者が気づいていないものまで、一発で記録される。このことは便利な反面、撮影者が当然写り込んでしまうので、いやな場合もあるだろう。
その場合は、iPhone、iPad、Android端末とWi-Fiで接続して、リモートシャッターが使える。つまり、無線接続をした状態で、カメラから隠れた位置でシャッターを押せるわけある。
(2)臨場感のある写真表現
こうして撮影した360度全天球の写真は、リコーが運営する「theta360.com」というサイトにアップロードすれば、インターネット上に公開される。いったん公開された3Dパノラマ写真は、Webブラウザやスマートフォンアプリで閲覧でき、ぐるぐる回して楽しむことができる。
3Dパノラマ写真は、ぐるぐる360度、好きな方向で見回せるので、あたかも撮影者と同じ場所にいるような特別な臨場感が感じられる。さらには、撮影者が写り込んでいることで、臨場感が増す場合もある。
(3)独特の視点とインパクト
Thetaでの撮影をいくつか経験すると、カメラの位置が作品に大きく影響することがわかってくる。最初のパノラマ写真は、大勢の初詣客で揉みくしゃになりながらの撮影だったが、Facebookで公開したところ、友人の間で「迫力あるね」と良い反応をいただいた。どこにカメラを置いてシャッターを押すかで、これまでにないインパクトのあるパノラマ写真が楽しめるようだ。
また、普段見慣れた風景だけでなく、カメラが小型軽量なために、高いところから俯瞰した写真や、低いところから、昆虫の視点で撮影した写真なども可能だ。筆者も、三脚や一脚を使ったり、Thetaを地面に直接置いたりして、視点の変化による新鮮な画像の世界を楽しんでいる。これも、Thetaの魅力の1つだ。
従来の写真とThetaで撮影した写真の違いをまとめると以下のようになりそうだ。
従来の写真 | 撮影者が情景を「切り取る」(画角(ズーム)、構図の概念) 「切り取り方=構図」のセンスが問われる面白さがある |
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Theta | 撮影者の回りが全部記録される 画角、構図、という概念がない。ズームは見る側に任される 「視点」を選ぶセンスが問われる面白さがある |
従来のカメラでは、「構図」や「ピント」、「ボケ」を上手に使うことで、どこに注目してほしいのか、撮影者の意図を自然に表現するのが、まさに撮影者のテクニックである。
一方、Thetaはこれとは別のテクニックが要求される。構図の概念がなく、ピント合わせも完全自動だが、やはり「視点」がキーワードだろう。「へえ!ここからだとこんなふうに見えるのか!」という驚きを、鑑賞者に伝えることができる面白さが、従来のカメラに増して重要だろう。
また、Thetaの場合、撮影者が意図しないものまで写ってしまう。これは欠点でもあるが、長所でもあると思う。Thetaはこう考えると、本当に新しい撮影体験と表現方法を与えてくれるカメラだと思う。
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