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2013年のタブレットを冷静に振り返る

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PCがタブレット側に適用領域を広げた2013年

tm_1312_qh55_01.jpgタブレットの概念をPC側に引き寄せたWindows 8.1タブレット。写真は富士通の「ARROWS Tab QH55/M」

 ITmedia PC USERは、タブレット端末の記事を多数掲載しており、タブレット USERというまとめページも設けている。とはいえ、昨年までは、パソコン(PC)の名を冠する媒体でタブレットについて書くことに、やや抵抗感を感じつつ、編集部のリクエストや注目を集める分野ということでコラムに取り上げてきた。

 しかし、今年になってみると、PCとタブレットの距離が大幅に縮まり……いや、PC産業がタブレット側に適応領域を広げてきたという方が正しいのだろうが、本誌でタブレットについて書くことに、あまり違和感がなくなってきた。

 Windows 8を搭載するPCが増え、8.1へのバージョンアップやWindowsタブレットのパフォーマンス向上といった要素が、タブレットの概念をPC側に近い方向へと広げたことが背景にはあると思う。

 一方で、これまで“タブレット端末”と漠然とした言葉で表現すれば、おおよそ“iPadの親戚”的な商品イメージができていた昨年までとは異なり、製品の多様化が進んだ年でもある。まずは、タブレットという商品カテゴリの変化について振り返りつつ、2013年のタブレット市場トレンドについて、考えてみることにしよう。

サイズバリエーションの広がり+用途バリエーションの広がり

os_ipadrev-01.jpg2012年を振り返ると、「iPad mini」が登場し、iPadファミリーを中心にサイズバリエーションが広がった1年だった。下がiPad、上がiPad mini

 2012年のタブレットを思い出してみると、そこで起きたのはサイズバリエーションの広がりだった。北米、欧州とタブレット市場が爆発的に伸びたことで、サイズバリエーションが広がる余地が生まれたからだ。

 画面そのものがユーザーインタフェースとなるタブレット端末の場合、画面サイズの違いは商品性に大きな違いをもたらす。例えばiPhoneとiPadは、ハードウェアとソフトウェアの構造は同じと言っていいほど近いが、画面サイズの違いとそれによるアプリ設計の違いから、まったく異なるカテゴリの製品になっている。

 これは10型程度のタブレットと7型程度のミニタブレットとの間にも言えることで、同じアーキテクチャや同じアプリケーションを使っているとしても、画面サイズの違いは適応領域の違いとなる。ユーザーから見てどちらが優れているかではなく、どちらが適しているかという話だ。

tm_1212_tablet2012_05.jpg2012年に登場し、圧倒的なコストパフォーマンスで人気を博した「Nexus 7(2012)」

 GoogleがAndroid搭載タブレットの普及に、それまでは開発者向けプラットフォームの意味合いが強かったNexusブランドを通じ、圧倒的にコストパフォーマンスの高い端末「Nexus 7(2012)」を提供したことも、ミニタブレットというジャンルが定着する一因になった。Appleの「iPad mini」がヒット商品になったことも大きく、(円高だった昨年の為替も大きな要因だが)やはり1万9800円というNexus 7(2012)の価格が市場トレンドを作ったと言わざるを得なかった。

 「では今年は?」というと、用途のバリエーションが広がったことが大きな特徴だったと思う。これまでタブレットというと、iPadが1つの規範となってきた。PCがあらゆる作業、アプリケーションをこなせるよう、高いパフォーマンスやリッチなユーザーインタフェース、多様な使い方に対応できる柔軟性を重視しているのに対して、iPadはクラウド型サービスとユーザーの間を“アプリ”という媒介役を通じてシンプルに結びつける。

 このような視点で言うと、細かなユーザーインタフェースのアプローチなどは異なるものの、Androidタブレットも概して似た端末だったと言える。多様な端末が生まれやすいAndroidの土壌が、iPadとは異なるテイストの端末を作り出すとはいうものの、ザックリと大まかに見れば(iPhoneとAndroidスマートフォンがそうであるように)同じような製品と言える。

 しかし、今年はそこにWindowsタブレットが加わった。正確に言えば、昨年末から加わっていたが、昨年末に投入されたWindows 8搭載タブレットは2つの点でタブレットというジャンルを拡張するには不足する部分があった。

 1つはWindows 8そのものの完成度が低く、「キーボードなしのタブレットだけで使いこなせるか?」というと、コントロールパネルの設定1つを取ってみても、タッチパネルのユーザーインタフェースだけではこなせなかったことがある。Windows 8は、単にタッチ操作にも対応したPC用OSであり、キーボードとマウスでの操作が前提としてある……という甘えがあったように思う。

 さらに昨年末の段階では、Windows RTが動作する各社ARMプロセッサ、32ビット版Windowsのフル機能が使えるタブレットに適したIntelのAtomプロセッサともに、パフォーマンス面で十分と言えなかった。

 しかし、OSはWindowsがRTも含めてバージョン8.1になることで(完全とは言えないが)大幅に改善し、プロセッサはNVIDIAのTegra 4やIntelのBay Trail-TことAtom Z3000シリーズが投入されたことで大きく事情が変化した。とりわけBay Trail-Tの影響は大きい。従来のデスクトップOSも完全に動作するIntelプロセッサにもかかわらず、ARMアーキテクチャを採用する同世代のプロセッサと同程度の電力しか消費しないかたからだ。

tm_1311_surface_pro2_14.jpgtm_1312_tab_02.jpgWindows 8.1の登場で、Windowsタブレットの使い勝手は向上した(写真=左/「Surface Pro 2」)。2012年9月に登場した「Clover Trail」と、2013年2月にAndroid向けとして登場した「Clover Trail+」の後継となる「Bay Trail」(写真=右)。Windows/Androidの両OSに対応する。タブレット向けSoCである「Bay Trail-T」は、Atom Z3000シリーズとしてリリースされた

 これまでもiPad向けのキーボードが流行したり、一部のAndroidタブレットがOSをカスタマイズしてPCライクな使い方ができるよう設計していたこともあったが、あまり本格的なものではなかった。あくまで“キーボードも使える”程度でしかなかったが、Windows 8.1のフル機能が動くタブレットとなれば、それはかなり話が変わってくる。

 「せっかくiPadで機能を取捨選択して切り捨てることができたのに、フル機能のWindowsをタブレット端末に入れるなんてナンセンスだ」という方もいるだろう。従来のiPadの機能に満足している人たちにとっては、その言い分は正しい。iPad的にWindowsタブレットを使おうとしても、あまりいいところはない。

 しかし、一方でiPadでは仕事が完結しない人や、Microsoft Officeを使って文書を作れなければならない、あるいはWindows PCを前提に作られたシステムと接続しなければならないユーザーからは、はじめて“PCが不要になる”タブレットが登場したという感覚をWindowsタブレットに対して感じられる。昨年までは感じなかったとしても、ハードウェアのパフォーマンスやバッテリー駆動時間が向上し、Windowsのバージョンが1つ進んだ現在ならば、感じることができると思う。

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