サンフランシスコとオークランドで12月20日、米GoogleやAppleのものとみられる専用通勤バスが抗議デモによって進路を妨害された。増大するIT企業の影響力に対する反発の高まりを示す、最新の兆候と言える。サンフランシスコ一帯では、とりわけIT社員の流入に起因する家賃高騰の問題が深刻化している。
サンフランシスコのミッション地区で20日朝、出社する社員らをピックアップしていた通勤バスを約40人のデモ隊が取り囲み、約30分にわたって進路を妨害した。
どの会社に行くバスかはパッと見では分からず、バスのフロントウインドウには「メインキャンパス、Ridgeview」とだけ小さく表示されていた。インターネットで検索したところ、AppleがRidgeview Courtという住所にオフィスを構えていることが分かった。サンフランシスコから40マイルほど南に位置するカリフォルニア州クパチーノのApple本社からそう遠くない場所だ。
この件に詳しい情報筋がReutersに語ったところによると、20日朝には、オークランドでも、Googleが運行する2台の通勤バスが抗議デモの標的になったという。
「今や支配階級を形成しつつあるIT業界の人たちに、われわれの声を聞いてほしい。立ち退きを強いられている人たちの声だ」。サンフランシスコの抗議デモの参加者の1人は、バスの前に駐車させた小型トラックの後部から、集まった人たちに拡声器でそう訴えた。
デモの参加者らは「立ち退きのないサンフランシスコに」と書かれた横断幕を掲げ、「サンフランシスコ:現代の二都物語」と題したビラを配った。
Appleからはコメントを断られた。
Googleは声明を発表し、次のように述べている。「サンフランシスコベイエリアの住民に迷惑を掛けることはしたくない。当社をはじめ、IT業界の各社はサンフランシスコ市営交通局と協力し、市内でのシャトルバスの運行ポリシーについて協議している」
サンフランシスコでは、若くて所得の高いIT社員の流入が家賃高騰をもたらし、低所得層が立ち退きを迫られるなど、「ジェントリフィケーション」(下層住宅地の高級化)の問題が顕在化しており、IT企業の通勤バスはその最も目立つシンボルとなっている。一部からは、市の政策がIT業界に対して甘すぎるとの批判も挙がっている。
例えば、2011年には、サンフランシスコ市が定める1.5%の給与税をめぐり、税負担の重さを理由にサンフランシスコを離れる意向を表明したTwitterに対し、市が給与税の軽減措置が認めており、この件はその後もしばしば批判の対象となっている。
通勤バスの擁護派の意見は、社員が自家用車での通勤をやめて通勤バスを利用すれば、幹線道路の激しい渋滞を緩和できるというものだ。こうした通勤バスは大概、豪華なシートとWi-Fi接続を備えている。
一方、反対派は、「通勤バスは市営バスのバス停を混雑させ、地域鉄道サービスも含め、厳しい財政事情にある公共交通機関の利用者離れを引き起こしかねない」と主張している。
サンフランシスコでは、12月初頭にも、同じ地域でGoogleバスの運行を妨害する抗議デモが起きている。
20日のサンフランシスコでの抗議デモはIT業界全般に向けられたもののようだ。だが、オークランドでの抗議デモははっきりとGoogleを標的にしていた。このバスに乗り合わせたGoogle社員がTwitterに投稿した写真には、「Fuck Off Google(くたばれ、Google)」と書かれた横断幕を持ってバスの前に立ちはだかる2人の人物が写っている。
同じ社員が投稿した別の写真には、Googleバスの窓が割られた様子も写っている。
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