2013年は写真・カメラ界にとってなかなかエキサイティングな年だったのではないだろうか。
大きなトピックと言えば、iPhoneを代表するスマートフォンの影響で、コンパクトデジタルカメラが徹底的にやられてしまったことだろう。リーズナブルな価格の機種は売れていないらしく、メーカー各社とも低価格な製品からの撤退もしくは縮小を余儀なくされている。大手量販店をのぞいてみると、発売からそんなに時間が経っていないのにも関わらず、プライスタグには何枚も「値下げ!」の札が追加され、それでも商品の動きが鈍いという状況だ。好調と思われているミラーレス一眼は日本や台湾、東南アジアのみの地域限定らしい。
カメラ業界はお先真っ暗かと思っていたところ、ようやく円高も落ち着き、日本や米国ではプライスの高いハイエンドのカメラやレンズが徐々に売れ始めてきた、という話を聞いた。「日本は特にハイエンド製品が好調で、米国もかなり上向いてきている」(メーカー関係者)という明るい兆しだ。
前述の通りコンデジが危機的な状況なので、各メーカーの製品は高性能でより高価格なハイエンド、そして趣味性の高いレンジにシフトしていくのは間違いない。この上向きのいい流れに2014年春の消費税増税がどう影響するかが気にかかる。そんな2013年カメラ界の個人的に印象に残った3つの事柄について触れてみたいと思う。
ジャンルを確立した高級コンパクト機
大型センサー、そして高性能な単焦点レンズを搭載するコンパクトデジタルカメラが増えてきた。いわゆる「高級コンデジ」である。この流れを作ったのはシグマだ。2008年に登場した「DP1」がパイオニアである。どちらかというとキワモノ扱いだったこのジャンルに各社から新製品が登場した。
ソニー「DSC-RX1R」、ニコン「COOLPIX A」、ペンタックスリコー「GR」など、APS-Cやフルサイズセンサーを積んだカメラが出そろった。いずれも高価格に関わらず、高い画質が話題を呼んで予想以上にヒットした機種もあった。固定焦点レンズとセンサーの組み付け精度が画質に大きく影響を与えるということが認知された形だ。
実際に撮影してみるとデジタル一眼と遜色ないイメージが得られるし、コンパクトなのでハンドリングがとても軽快なのが分かるはずだ。先駆者たるシグマはDP1を「DP1 Merrill」へとブラッシュアップ、加えて、35ミリ換算45ミリ相当のレンズを備えた「DP2 Merrill」、75ミリ相当の「DP3 Merrill」を投入しDPシリーズとして3製品をそろえたが、各社が同ジャンルで追従し、ソニーがフルサイズというインパクトある製品を投入した今、どう出るかが楽しみだ。
・ミニマムボディから最高画質、そのギャップがたまらないフルサイズコンパクト——ソニー「DSC-RX1」
・街撮りスナップに最適なAPS-Cコンパクト ニコン「COOLPIX A」
・ついにAPS-Cセンサーを搭載した高級コンパクト——ペンタックスリコー「GR」
フルサイズ、高画素に対応した高性能レンズ
フルサイズ機や高画素機の登場によって高性能なレンズも続々と投入された。なかでもニコンは交換レンズのすべての収差を測定できるという計測装置「OPTIA」(Optical Performance and Total Image Analyzer)を開発し、画像シミュレーターと連携して「味」のあるレンズ開発を開始した。
その成果であるAF-S NIKKOR 58mm f/1.4Gは実に素晴らしい写りで(交換レンズ百景:オーラが違う新生ノクト——ニコン「AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G」)、女性ポートレートや夜景は何とも言えないいい雰囲気の描写だった。MTF曲線だけでは評価できない「わびさび」がこのレンズには存在するのを感じる。私も欲しいのだが、市場の評判もよく高価にも関わらず大人気で手に入らない状態が続いているようだ。
また、カールツァイスのミラーレスカメラ用交換レンズ「Touit」シリーズや、シグマの「コンテンポラリー」「アート」「スポーツ」の新プロダクト・ラインレンズ群も注目された。高精細高画質は当たり前で、レンズ描写の「味」の新時代に突入した2013年だった。
・交換レンズ百景:オーラが違う新生ノクト——ニコン「AF-S NIKKOR 58mm f/1.4G」
・交換レンズ百景:描写とデザインにこだわった名門ブランドの単焦点レンズ——カールツァイス「Touit 2.8/12」「Touit 1.8/32」
・交換レンズ百景:撮る喜びを体感できるフルサイズ対応 万能ズーム——シグマ「SIGMA 24-105mm F4 DG OS HSM」
ニコン「Df」の衝撃
一番最後に現れて、話題を総ざらいしていった感のあるカメラと言えば「ニコンDf」だろう。スペック競争から一歩離れたところで、改めて写真を楽しもう、という提案のカメラだ。
実際に使って見るとコンセプトがよく分かる。懐古趣味と言われるが、Dfの「f」のとおり、デジタルとアナログの「フュージョン」で、コマンドダイヤルでもアナログダイヤルでも気持ちよく操作でき、写真撮影という行為を楽しめるカメラに仕上がっていると思う。シャッター音も官能的で実にいいのだ。単焦点レンズがよく似合うため、とっかえひっかえレンズ交換していると、今までいかにズームレンズ偏重だったかに気づかされた。
このカメラはレンズ交換の楽しさを再確認させてくれたと思う。購入してから毎日使っているが、とても満足している。セールスもとても好調なようで、一定の反響があったといえるのではないか。これならひょっとしたら次期型機も期待できるかもしれない。次作はもっと踏み込んで、マニュアル露出オンリー、絞りリング搭載レンズの拡充、より一層の小型軽量化……などと妄想してしまう。写真撮影の楽しさを再認識させてくれたカメラだと言えよう。
・ニコン党待望、メカニカル操作を極めたフルサイズ一眼——ニコン「Df」
という風に2013年はなかなか印象的な年だった。2014年のカメラ業界がどうなるか楽しみである。
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