家庭用燃料電池「エネファーム」は、都市ガスから水素を取り出し、この水素と空気中の酸素を反応させる装置。お湯と電力の両方を同時に得ることができるコージェネレーションシステムの一種だ。国内では東京ガスや大阪ガス、東邦ガスなど大手ガス会社が製品を販売している。大阪ガスによれば、一般のガス給湯暖房システムなどを利用した場合と比較して年間の光熱費を7万3000円引き下げられるという。
大阪ガスは2013年12月、戸建て住宅用のエネファームの新製品6モデル*1)を発表、2014年4月に発売する(図1)。特徴は大きく4つある。現行製品と比較して、販売価格を引き下げたこと、エネルギー効率を高めたこと、スマートフォン対応のモデルを投入したこと、屋外設置に必要な面積を小さくしたことだ。
発電出力(250〜700W)や貯湯タンク容量(200L)、貯湯温度(60度)、機器の寸法、メンテナンスサポート期間(10年間)は現行製品と同じだ。
*1) 製品が6モデルと多い理由は2つある。まず、停電時にも利用可能な自立運転(関連記事)の有無と、スマートフォン対応、非対応によって4モデルに分かれ、スマートフォン非対応の場合は、排熱利用給湯暖房ユニットのメーカーが2社あるからだ。
6モデルのうち、最も安価なものは194万4000円(8%税込)*2)。2012年4月に発売した現行製品と比較して、価格を66万円引き下げた。価格を低減できた理由は5つあるという。水素と酸素が反応するセルを組み合わせたセルスタックについて、材料の低コスト化を進めたこと、都市ガス(メタン、CH4)から水素(H2)を作り出す燃料改質装置の構造を簡素化したこと、部品点数を削減したことが主な要因だ。この他「(セル内で用いる)触媒に新規品を用いたことと、量産が進んだことで、部品の調達コストが下がったことが効いている」(大阪ガス)。
*2) 新製品6モデルの価格は4種類に分かれる。最も安価な場合は自立運転機能がないモデルで、標準リモコンセットを選択した場合。最も高価なのは、自立運転機能が備わったモデルでスマートフォン対応リモコンセットを選択した場合(213万8400円、8%税込)である。なお、エネファームはこれまで民生用燃料電池導入緊急対策事業で、補助金の対象となってきた。2013年度は補助金の上限が45万円。2014年度の補助金の金額は未定である。
エネファームは電力と熱を生み出すため、効率を表現する場合、発電効率と、熱効率を含んだ総合効率の2つの数字が現れる。6モデル全て、発電効率は39.0%、総合効率は95.0%*3)であり、これは現行製品と比較して、それぞれ0.5ポイント、1.0ポイントの改善に当たる。主に燃料改質装置を高効率化することで達成した。「(改質装置内の)バーナーに新型品を採用し、熱のロスを抑えることで実現できた」(大阪ガス)。
*3) いずれも、燃料ガスを完全に燃焼したときの発熱量から水蒸気の凝縮潜熱を差し引いた値である低位発熱量基準(LHV:Lower Heating Value)に基づいた効率値。
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