日本版「Xbox Music」はどうか 日本マイクロソフト初の本格音楽配信サービスはMP3のDRMフリー
2013年11月末に日本でのサービス開始が発表された「Xbox Music」。12月20日にようやく正式サービスがはじまった。
Windows 8のリリース以降、「デバイス&サービスカンパニー」をうたいつつ、その方翼である「サービス」が日本市場ではいまひとつ充実していなかった印象のあるMicrosoftだが、今回の「Xbox Music」のサービスインでようやくその一歩を踏み出した感がある。まずはサービスの概要を見ていこう。
日本版Xbox Music(以下、Xbox Music)は、MP3形式のDRMフリー楽曲をダウンロード可能な音楽配信サービスだ。サービスイン時点での対応国内レーベルはエイベックスなど9社(エイベックス、キングレコード、テイチクエンタテインメント、徳間ジャパン、日本コロムビア、ビクターエンタテインメント、フォーライフミュージック、ユニバーサル ミュージック、ワーナーミュージック)で、全世界約3600万曲のうち日本では約2500万曲が利用できる。音楽データはDMRフリーのMP3で、ビットレートは最大320kbps。価格帯は1曲150〜250円で、支払いはクレジットカードのほか、Windowsストアギフトカード/Xboxギフトカードも利用できる。WindowsストアギフトカードはiTunesカードなどのように量販店やAmazon.co.jpなどで購入できるプリペイドカード(パッケージ版は2000円、5000円)で、今回のXbox Musicの楽曲のほか、Windowsストアアプリ購入の決済などに使用できるもの。通販サイトではパッケージ版のほか、すぐ使えるダウンロード版も販売されている。クレジットカードを持たない若年層(あるいは登録したくない/使いたくない層)も手軽に利用できるよう考慮している。
利用にあたってはWindows 8.1/RT 8.1搭載マシンから、標準の「ミュージック」アプリ経由でアクセスするかたちとなり、現時点でWindowsの旧バージョンやその他のデバイスからアクセスする手段はない。Web用インタフェースも提供されていないため、基本的に「Windows 8.1マシンで曲を購入/ダウンロードし、他のデバイスへはファイルコピーで転送する」やり方をとることになる。Windowsデバイス拡販の1つと考えれば理解はできるが、昨今、間口が狭いという点は少々残念なところだ。
では実際に試してみよう。
はて、……ミュージックアプリよりXbox Musicストアにアクセスできない。ミュージックアプリの左メニューに「見つけよう」という項目が出現するはずなのだが、アプリを再インストールしてもそれが表示されない(これまでの単なるミュージックアプリのインタフェースのまま)ことでいきなりつまずいた。知人のアドバイスで「それはMicrosoftアカウントの問題では?」とのことなので、これまで使っていた現アカウントではなく新規に別のMicrosoftアカウントを作成してみたところ無事望むメニューが表示された。
「画面の表示が英語」であり「ストアの内容が米国版のもの」「日本版にはないはずの“Radio”項目がある」などの日本版サービスとは違うのだが、とりあえずXbox Musicは利用できるようになった。こちらはどうやら「筆者のプライマリのMicrosoftアカウントは米国ベースのもの」であり、「すでにXboxアカウントとも連携している」などの理由からか、うまく日本版サービスとしてミュージックアプリが処理されなかったらしい。
新規アカウントで表示が英語となったのは、使用する機材が米国版(米国で購入した)Surface Proで表示言語も英語表示であることに起因するようだ。こちらは言語設定の優先順位を日本語に変更して再起動したところ、先ほどの項目から“Radio”が消え、日本版のXbox Musicストアに接続された。ともあれ、表示がまだ英語のままなのは何かの不具合と思われるが、こちらは今後の利用にて影響はないのでこのまま進めることにする。
使い勝手は良好 間口は狭いが……DRMフリーですし
Xbox Musicのトップ画面は「新作アルバム」や「ランキング」が並ぶ比較的シンプルなものだ。ただ、米国版Xbox Musicにあるような無料の楽曲ストリーミング音楽を聞き流せる「Radio」機能や、他の音楽配信サービスにあるようなお勧め機能など、“楽曲を発掘するための機能”がまだあまり充実しておらず、当面はアーティスト名や楽曲名を直接入力して探す検索に頼るスタイルになる。
もちろん、楽曲そのものは邦楽、洋楽ともにある程度カバーされ、古い楽曲から新作までライアップされていたりと、サービス開始直後にしてはがんばっている印象はある。ただ、この点は他のサービスと比べて特別秀でているわけでもないため、DRMフリーでWebからのアクセス/購入手続きも可能なAmazon.co.jpのMP3ストアなどと比べ、後発ならもう少し……な印象も受ける。なお、米国版Xbox Musicは月額9.99ドルまたは年額99.9ドルで音楽が聴き放題になる「Xbox Music Pass」呼ぶサブスクリプション型サービスも展開されているのだが、日本版サービスではまだ(?)提供されていない。現時点は「気に入った曲があれば購入」という形で、あくまでWindows 8.1の付加価値を高める付加サービス程度に考えておくのがいいかもしれない。
ヘビーユーザーにはやや物足りない印象はあるのだが、楽曲購入までの導線はスムーズで悪くない。各楽曲には“試聴”ボタンが用意されており、30秒間の試聴が可能。気に入ったらとなりの“カート”ボタンを押せば、そのまま決済手続きに進む。ちなみに初期状態では、決済に必要なXboxプロフィールを入力・登録済みとしているユーザーは少ないと思われるため、いちどMicrosoftアカウントにアクセスしてクレジットカード情報を登録する必要がある(こういった複雑な部分はいささか分かりにくい。Xboxプロフィールってそもそも何だよという人もいるだろうし)。
決済後にダウンロードが開始され、PCの「音楽」フォルダに楽曲が保存される。購入データはDRMフリー(デジタル著作権保護管理を施していない、普通のファイル)なので、ここから他のマシンへの移動/コピーも可能であり、普段使用する携帯音楽プレーヤーへ転送して活用してもよいだろう。
Xbox Musicは、米国版にはすでにあるサブスクリプション型サービス「Xbox Music Pass」がまだない点は別にして、楽曲の扱いやすさや購入プロセスが普通にシンプルであるのは悪くない。今後の課題としては購入できるアーティスト/楽曲のラインアップを拡充しつつ、「手続きはWindows 8.1/RT 8.1のミュージックアプリ経由のみ」という間口の狭さの改善と、楽曲を“発見”する仕掛けの強化が挙げられる。
ちなみに“発見”を後押しするリコメンド機能は、2013年11月に行われた発表会でWindows 8.1以降に導入された「Bingスマート検索」と連携提供する予定だ。アーティスト名の検索ワードから、対象Webサイト、ディスコグラフィー、バイオグラフィー、アーティストの画像、購買可能な楽曲リストなどはもちろん、関連アーティスト(ファンが同様に好む別のアーティスト、あるいは師弟やコラボ実績のあるアーティスト、ライバル……など)の情報など、検索ワードに由来する周辺情報も一元化して表示する“自動リコメンド的”な機能を実装することがXbox Musicのポイントの1つなのだが、2013年12月24日現在、残念ながらこの機能はまだ実装されていない。
ともあれ日本マイクロソフトは「Windows 8.1の機能との融合、Windows 8.1デバイスとのシームレスな連携性を強みに独自性を出す」「Windowsで音楽がもっと好きになる」とサービスの強みを述べていることから、まずはサービスインを──後日続々、という状況だろう。サービスがどこまで進歩し、音楽ファンに受け入れられるものになるか、さらには新たな音楽ファンを生み出せるものになるか、今後を見守りたい。
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