先日、「来年のトレンドを追う」というビジネス媒体の記者から取材で、”4Kテレビ”をテーマにした今後の動向についてインタビューを受ける機会があった。筆者は取材記事を書く記者でもあるため、どうしてもこうしたテーマに対して自分なりのストーリーを考えてしまうクセがあるが、相手の記者はまた別の意図で同じテーマについて考えているもので、その間にはたびたび食い違いが生じる。
幸い、出自が近い(以前はPC媒体にいらっしゃったそうだ)ためか、うまく共通認識を得ることができたが、取材相手のマインドセットに合わせ、伝えたい意図の本質部分を理解してもらうのはなかなか難しい。自分の文章でさえ難しいのだから、インタビュアーを通して伝えるのは、なおさらにハードルが高い。
インタビューをする側の立場の時にも、こうした受ける側の苦労を考えねば……と思った次第だが、”4K”について「なるほど、そう見えている面もあるのか」と新たな気付きもあった。
”4K”に対する多様なイメージと混乱
デジタルハイビジョン放送が普及する中、SDとHD(あるいはハイビジョン)というキーワードが一般的になった。SDとはStandard Definitionで標準解像度。HDはHigh Definitionで高解像度。それに対して”4K”という言葉は、あまりに違和感が大きい。
エレクトロニクス業界の中では、とくに海外勢を中心に「UHD」(Ultra High Definition:超高解像度)という言葉が使われる場合もあるのだが、日本でも海外でもほとんど普及していない。では、なぜ”4K”なのか。
実は4Kとは本来、DCI(Digital Cinema Initiative)という映画のデジタル化に関する業界団体が決めた標準仕様の一部だ。テレビでいうところの4Kでは、フルHDの4倍の画素(3840×2160ピクセル)になっているが、DCIの4K(正式には4K2K)は横方向の解像度が4096ピクセル。16:9ではなく17:9のアスペクト比になっている。
もっとも、今ではフルHDの4倍(QFHD)も4Kと呼ぶのが一般的になっており、解像度だけを示すのであれば、対して画素数が違わないこともあって「おおよそ4000×2000ピクセルぐらいの解像度」という意味で4Kといっても構わない、というのが業界内の空気感だろう。もちろん、プロ用途だけにほかのさまざまな仕様(色再現域や色深度、カラーフォーマットなど)も異なっているが、すでに4Kという言葉は技術仕様を乗り越えたところにある。
さて、話を”4Kテレビ”に戻そう。
4Kテレビについて尋ねられるとき、必ず聞かれるのが「本当に必要なのでしょうか?」という質問だ。しかし、必要か必要でないかという視点は、実のところあまり適切ではないと思う。なぜなら、4Kどころか、フルHDでさえ、”実用品としてのテレビ”には必要がないからだ。
にもかかわらず、37インチ以上のほとんどのテレビがフルHD化しているのは、必要だからではなく、高精細な映像によって、より高い品位の体験を、放送やBlu-ray Discによって得たいからに他ならない。同じことは4Kでも同じなのだ。確かに現時点において4Kテレビは高価な買い物であり、本当にそれが”現時点で”買うべき代物なのか?という議論はあるだろう。
しかし、「4Kテレビは必要なのか?」と問われれば必要ではない。高品位な映像で、より高い体験を得られるかどうかが重要なのだ。では、そうした視点で現在の、そして近未来の4Kテレビを考えるとき、そこにどんな価値があるのだろうか。
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