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OSアップグレードとハードウェアの入れ替えを同時に行うのが理想
2014年4月9日(日本時間)にサポート終了が迫ったWindows XP。同OSが発売されたのは2001年のことだった。
2001年といえば、NTT東日本が「Bフレッツ」の提供を開始したり、Yahoo! BBやイーアクセス、アッカ・ネットワークスが低価格ADSLサービスに参入するなどして「ブロードバンド元年」と呼ばれた年だ。ほかにはDDIポケットがモバイル通信サービス「Air H"」を開始するといった出来事もあり、こと通信サービスについては、ナローバンドからブロードバンドへの過渡期真っただ中にあった。
そんな中でリリースされたWindows XPだが、ダイヤルアップ接続をはじめとして、旧来の通信回線を前提とした仕様も数多く残されている。こうした仕様のまま、昨今のスパイウェアなど、高度化した脅威に対抗することは構造的にも難しく、また最新のソフトウェアを利用するにしても、綱渡りにも似た状況であるわけだ。
身近なところで分かりやすい例を挙げよう。Windows XP発売当初、PCで主流のCPUはちょうどPentium IIIからPentium 4へと移行しつつあったが、昨今のアンチウイルスソフトによくみられる高度なヒューリスティックエンジンによる未知のウイルスをリアルタイムで検出する技術は、その当時には一般的でなかった。
そのため、これらの旧世代CPUでリアルタイム検出を実行しようとしても、処理速度が追いつかず、まともに機能しないことがほとんどだ。ハードウェアのアップグレードとともに、開発段階からこれらの機能を念頭に置いて設計された新しいOSに入れ替えない限り、対応は困難といえる。
またハードウェアについては、通信機能以外の進化も著しい。64ビット対応による大容量メモリのサポート、USB 3.0などの高速なインタフェース、高解像度のディスプレイ、タッチパネルといった技術についても、Windows XPの発売当時にはまだなかった、もしくは一般的でなかったものばかりだ。CPUも現在ではPentium以降に登場したIntel Coreが第4世代(開発コード名:Haswell)まで進化し、クアッドコア以上の環境も当たり前となって、処理速度は劇的に向上している。
Windows XP世代のPCは、ハードウェアの経年劣化も心配だ。OSだけアップグレードしたところで、大事なデータを記録したHDDや電源など内部のパーツが寿命を迎え、すぐに故障してしまっては元も子もない。
こうした点も踏まえると、もし当時のハードウェアをだましだまし使い続けているのであれば、OSだけをアップグレードするのではなく、新しいハードウェアにまとめて入れ替えるのが得策だ。新しいハードウェアの多くは消費電力が下がっている場合が多く、節電効果も期待できるので、企業ユースでのメリットも高い。
操作性がXPに近く、互換性も高いWindows 7
Windowsのソフトウェア資産を生かしつつ、Windows XPから移行するOSとしては、最新の「Windows 8」(そこから無償アップデートが可能なWindows 8.1も含む)と、その1つ前の「Windows 7」が候補となり得る。もっとも、現状においてビジネス用途で移行先のOSに多く選ばれているのはWindows 7であり、およそ6割を占めているという。
Windows 7が好まれる理由はいくつかある。1つは操作性がWindows XPに近いことだ。最新のWindows 8は「モダンUI」と呼ばれる、タッチ操作を前提にしたインタフェースが採用されており、見た目がWindows XPと大きく異なる。
もちろん、タッチではなくマウスで操作することも可能だが、先日Windows 8.1にアップデートされるまではスタートボタンすら存在せず、またそのスタートボタンにしても従来とは機能が大きく異なるなど、Windows XPから移行すると戸惑いも多いだろう。
こうしたユーザーインタフェースの違いから来る戸惑いを少しでも減らしたければ、最新のWindows 8/8.1ではなく、Windows 7をチョイスしたほうがよいだろう。オフィスで従業員のPCをすべてWindows 8/8.1に乗り換える場合、PCの基本操作を改めて学習してもらう必要があり、それにかかる時間や追加のコストも考える必要がある。
これがもし、2〜3年後にWindows 7がサポート終了となり、再びOSの乗り替えを検討しなくてはいけないようであれば、慣れるための多少の期間が必要であってもWindows 8に乗り替えたほうが長い目で見て得策だろうが、幸いにしてWindows 7のサポート終了まではまだ6年もの猶予がある(前回記事参照)。
ソフトウェアの互換性についても、枯れた(アップデートを繰り返して不具合を減らし、安定化が進んだ)Windows 7のほうが、Windows 8に比べて高いことも見逃せない。市販の主要なソフトウェアは、メーカーがアップデートプログラムを用意しており、明示的に非対応をうたっているものを除けば、Windows 8/8.1でもWindows 7でもまず支障はないだろう。
しかし、自社向けにカスタマイズされた古い業務用ソフトウェアについてはそうはいかない。多くのベンダーでは互換性検証のために新型PCの貸出サービスを実施しているが、その結果としてWindows 7を選択している企業は少なくない状況だ。いくら最新のOSとはいえ、業務で長年使い続けてきたソフトウェアが動作しなくては意味がないわけで、これは当然だろう。業務用ソフトウェアの移行も同時に行うとなると、さらにコストがかかってしまう。
また、意外と見逃されがちだが、イントラネットのサイトや、Webブラウザベースで動作するサービスを利用するにあたって、Webブラウザの互換性が問題になる場合もある。Windows 8にはInternet Explorer 10、Windows 8.1にはInternet Explorer 11が付属するが、これらのWebブラウザでは互換モードを使わなければイントラネットなどが閲覧できないケースがある。こうした場合、Windows 7に付属するInternet Explorer 9であれば、支障なく閲覧できることも少なくない。
もちろんこれは一例で、Internet Explorer 8以前でないと閲覧できない場合はWindows 7でもお手上げだが、考え方についてはお分かりいただけるだろう。最近ではWebブラウザでのインタフェースを持つサービスも増えているので、独自のソフトウェアにとどまらず、こうしたサービスについても、事前にきちんと検証しておく必要がある。
タッチ操作に最適化され、サポート期限も長いWindows 8
もちろん、Windows 8を選ぶメリットはある。具体的には、今後ますます増えてくるであろうWindowsタブレットや、2in1デバイス(ノートとタブレットを1台でまかなえる変形型PC)の製品に設計が最適化されていることだ。
またモバイルノートPCなどでタッチ操作を利用したい場合、タッチを前提に設計されたWindows 8のほうが操作性ははるかに高い。業務用ソフトウェアの動作に支障がなく、営業スタッフが顧客にタブレットスタイルでスマートに画面を見せて商品説明できたり、ペン入力でメモや手書きでのサインを直ちにデータ化できるなど、こうした付加価値に魅力を見いだせるのであれば、検討する価値は高い。
また、サポート期限についても、後発であるWindows 8/8.1のほうが有利だ。Windows 7のサポート終了は2020年1月。およそ6年後だ。これに対してWindows 8は2023年1月ということで9年後となり、約3年の開きがある。少しでも“次の選択”を先に延ばすのであれば、Windows 8世代のOSに軍配が上がる。
ちなみに、PCの買い替えに際しては、Windows 7 Professionalへのダウングレード権を持つWindows 8.1 Proプリインストールモデルを導入しておき、当面はWindows 7を利用し、将来的にWindows 8に無料で変更するという方法もある。
これであれば、ひとまずWindows 7へと移行しておき、かつサポートは9年後まで受けられるという「おいしいとこ取り」が可能になる。各社のプリインストールモデルの多くにはこのダウングレード権を持つモデルが用意されているので、要チェックだ。次回以降、具体的なモデルを紹介する際に詳しく説明しよう。
(第3回に続く)
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